第44話

 午後二時過ぎ。

 ギラギラと照り付ける太陽の陽ざしに完全に体力が奪われてゆく。


 フェスのスタッフ用に支給されたお弁当を手にして、公園の日陰で一休み。

 暑さで食欲が減退しているが、食べなければ尚体力が削がれる。


「いただきます」


 ミストシャワーの下で燥ぐ子供たちを眺めながら、幕の内弁当に箸をつけた。


「すみません。競泳のフェス会場って、この近くですよね?」


 高校生らしき男の子二人組が声をかけて来た。

 私がフェスイベントのスタッフポロシャツを着ているからだろう。


「東京アクアティクスセンターという所に今年から変更になりまして、ここからだと、国際展示場駅からりんかい線で新木場方面に二駅。新木場駅で下車し、少し戻る感じに徒歩で『辰巳の森海浜公園』を目指して貰えれば、すぐ会場が見えるはずです」

「国際展示場駅から二駅、新木場で降りて、辰巳の森海浜公園ですね!」

「新木場駅に着けば、イベントスタッフがいると思いますので」

「ありがとうございます!! 地方から来たんで、ホント助かりました!」

「いえ、フェス楽しんで下さいね。……あっ、よかったら、これ」

「いいんですか?!」

「非売品なので」

「ありがとうございます」

「お姉さんも、フェス楽しんで下さいね!」

「……ありがとう」


 ポケットにあった、イベントクイズの景品のピンバッジをプレゼントした。

 五日間で数十万人を超えるフェス。

 こんなに猛暑の日でも、わざわざ遠方から来て下さる人がいるのが嬉しくなった。


 今までイベントに駆り出されることがなかったら知らなかった。

 原がいつも飲み会で、いきいきと語るのが漸く分かった気がした。

 これはハマるかも……。

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