第39話

 買って来た食材で、豆腐茶碗蒸しとかぼちゃのスープを作る。

 薬で熱が下がっても喉が痛ければ、またぶり返すかもしれない。

 消化が良く喉越しがいいものを作り置きしておけば、明日起き上がれるようになったら食べられると思って。


 煮込んでいる間に、洗濯カゴに入っていた服とさっき脱いだTシャツとタオルを洗濯機に入れる。

 浴室に干されていた残りの衣服を取り込んで、それを畳み、リビングソファの上に置く。


 いつもしている家事だが、他人の家だと勝手が違うし、変に緊張してしまう。

 

「……何だか、本当に付き合ってる彼女みたい」


 白とチャコールグレーを基調としたシックでモダンな部屋。

 必要最低限といった感じで、家具もそれほど多くなく、一つ一つにお洒落感がある。


 リビングテーブルの上に置かれている雑誌でさえ、インテリアとして飾られていそうな海外の雑誌。

 こんな本、どこで買うのだろう?


 リビングの一角にある書棚には、法律関係の書籍がびっしりと並んでいる。

『事件類型別 弁護士実務ハンドブック』タイトルを見ただけで、中に漢字がびっしり埋め尽くされているのが目に浮かぶ。


 幾つか手に取って見ているうちに、『弁護士の周辺学』という本を見つけた。

 弁護士が取り扱う法律知識外の会計・税務・登記・戸籍についての実務書。

 弁護士はあらゆる知識が必要なのだと、改めて実感した。


 二十三時十分、そろそろ帰らないと。


 寝室を覘くと、起き上がって水を飲んでいる彼と視線が交わった。


「喉痛い?」

「……ん」

「じゃあ、ちょっと待ってて」

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