第6話
突然の俺の提案に目を見開いた鮎川。
普段は殆ど動じない彼女が、この時ばかりはというくらい驚きを見せた。
その顔が意外にもあどけなくて、思わず可愛いだなんて思ってしまった。
「まぁ、こいつらの言うことにも一理あるっつーか。お互いに面倒事を解消できんなら、それはそれでアリかと思って」
「……」
「別に、鮎川に彼女らしいことして欲しいとか言ってんじゃなくて、ま、その何だ……利害の一致ってやつ?」
これもある意味、口説きの部類に入るのか?
よく分かんないけど……。
「利害の一致!! そういうのもあるよね! 政略結婚だとか、見合いだなんてまさにそれじゃん!」
「そうだよな。性格とか体の相性だけとは限らないよな」
「今まで通りでいいしさ。必要な時に手を貸すってのはどう?」
「……う~ん、それくらいなら」
「おっ!? 鮎川もその気になったか?」
「そういうんじゃないけど……」
「友達から始める付き合いってのもあるじゃない。二人は既に顔見知りの友達みたいなもんなんだから、その点においては既にクリアしてるし、別に何ら支障はないじゃない」
「そう言われると、何て答えていいのか……」
『いい歳して恋の一つや二つしないなんて体が腐るよ』と、無理やりこじ付けるような感じで入社当時からずっと言われ続けてきた。
別に性欲なんて、自己処理すりゃあいいだけの話で。
誰かに俺の人生を掻き乱して欲しくない。
その点、鮎川は『男は要らない』というスタンスだから、俺と仮に付き合ったとしても、俺に求めるものなんて何もないはず。
恋愛なんてどうでもいい。
日常の不要なリスクの対策を講じるだけ。
きっと鮎川も同じだと思うから。
「どう? ……返事は急がないけど」
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