第5話

(楢崎視点)

 二カ月ぶりの同期会に顔を出したまではいいのだが、毎度のこと絡み酒で煩い二人(原と篠田)。

 もう一人の同期の鮎川は普段から大人しめで、篠田と違って自ら愚痴を零したりしない。


 原はチャラ男だが、仕事は真面目で、営業部でもかなり成績がいい。

 天性の明るさというのだろうか。

 この男がいるだけで、場がもっているというのもある。


「よくあるのか?」

「え?」

「接触を含む、口説き行為の類」

「……ないとは言えないかな」


 俺の質問に苦笑する鮎川。

 才色兼備の彼女は、入社当時から人気があるのは知っている。

 社食でランチをしていると、よく男性社員から飲み物やお菓子などを無理やり押し付けられているのを見ているから。


『男は要らない』と同期会でも度々口にしている彼女。

 俺の『女に興味がない』のと一緒で、この丸五年間、決してブレてない。

 だから、彼女だけはどこか、安心している部分がある。


 同じ穴のむじな。

 そんな気がしてならない。


「虫よけにもなるし。もしかしたら、すっごく相性いいかもしんないじゃん」

「そうだよ! 美男美女で仕事もできて、お互いの印象も悪くないでしょ?」


 こいつらの言ってることにも一理ある。

 鮎川が口説かれるように、俺も不要なアプローチを受ける。

 はっきりばっさりと『女に興味がない』って言ってんのに、それでも声がかかるわけだから。


 俺に彼女がいればいいんだろ?

 そしたら、この辟易へきえきしてる日常も、少しは変わるのかもしれない。


「俺と付き合うか?」

「は?」


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