第24話「第二のBOSS戦」(後編)

 大部屋の奥にいる、2番目のBOSS「パペットマスター」の「ヘルクラウン」と対面したPTは、それを塞ぐように立ちはだかる、大量の、メイスをもった木製のパペットの数に、少しだけ怯んだ。


 そして道化師の恰好をして、赤い短剣をもった「ヘルクラウン」が、


「また死ににきた者がいるようだね。僕のパペットの群れを突破して、ここまで来れるかな?」と余裕じみた台詞を口にする」


 ゼクロスは、これを全て倒すのはきついと判断して「頭を叩く、みんな、道を作ってくれ!」とPTのみんなに彼にしては珍しく、指示をだした。


「オッケーよ」ローザは応じて、パペットの群れに斬り込むと、


「任せろ!」とクレイドも、パペットの群れに突撃してメイスを振るう。


 エリシャも弓をしまい、良質なショートソードに切り替えて、パペットと白兵に入り、


 ルーシアも「踊る剣」を宙に浮かべて、襲い来るパペットを寄せ付けない。


 ゼクロスは、「ヘルクラウン」への強行突破を試みるが、パペットの壁は厚く、なかなか切り崩せない。


 そこで、戦況を見て、魔法のアイテムを使ったのがルーシアである。


「無限のポーチ」から「時空のオルゴール」を取り出したルーシアが、その蓋を開けると、流麗な音楽が流れ始めて、PTのみんなを除く、全ての敵に、強い「鈍足化」効果を付ける。


 これは、パペットはもちろん「ヘルクラウン」にも若干きいて、


「「時空のオルゴール」か。よくそんなものをもっているね」とこれを感嘆させた。その反応はまるで本当のプレイヤーのようにも、ゼクロス達には感じられた。


 ともあれ、パペットたちの動きは急激に鈍り、ローザとクレイドがこれを切り崩すと、「ヘルクラウン」への道ができる。すかざずゼクロスはそこを突っ切り、ヘルクラウンとの対決となった。


「これでどうだ!」と、ゼクロスは「トライスラッシュ」を連打して「ヘルクラウン」のHPの半分を削るが、SPが切れる。ヘルクラウンは、毒の塗られた赤いダガーで、サクサクとこまめにゼクロスにダメージを与える。


 段々と押されて不利になるゼクロス。


(そろそろクラススイッチかな)とゼクロスが考えた所で、


 ドシュッ!


 と深く刃物を刺す音が聞こえて、ヘルクラウンが倒れ伏す。密かに迂回して背後に回っていたウェルトの、不意打ちのアサシンスキル「暗殺」である。


 この「暗殺」成功すれば、一撃で相手を倒せるが、完全に相手の視界にない状態で、しかも後ろからでないと仕掛けられず、成功率もそれほど高くない。しかし一撃で倒せなくても、大ダメージは出るという、いささか博打的なスキルだ。


「ヘルクラウン」は倒れ伏して、黒くなって、かき消える。


「LVUP!!」ゼクロスPTの、全員のLVがあがる。


 ゼクロスはパラディンLV27、ローザはダークナイトLV26、エリシャはレンジャーLV25、クレイドはソルジャーLV22、ウェルトはアサシンLV27である。ルーシアも錬金師のLV55となった。一人だけLVが高いのは、高度な合成で、魔法アイテムを作りまくった合成でのLVUPの成果である。


 そして、PT全員のアイテム欄に「黄色い宝珠」がイベントアイテムとして入り、「黒い宝珠」に続いて2個目の宝珠の入手となる。


 既にここにはなにもなく、ジルドの町に戻るゼクロスPT。


 フラグのNPCにこれを伝えると、攻撃力の上がる「猛攻のブレスレット」を報酬で受け取る。


 皆の意見で、これはBOSSに止めをさしたウェルトがつけることになった。


 ジルドの町から、翼のペンダントで、首都セルフィのエリシャの店に戻ったゼクロスのPTは、


 BOSS戦を回想した。


「今日はみんなもルーシアも頑張ってくれたね。ウェルトのあれには少し、びっくりしたけど」


 ゼクロスがあの闇討ちを思い起こして、言うと、


「一応アサシンのクラスだからな、たまにはあのくらいはしないと、打撃力のない分を補えない」


 とウェルトも、色々考えて戦っているようだ。


 ローザは、


「う~ん、今日は私はいまいちだったかな。毒も麻痺も効かないんじゃ「暗黒剣」使えないし」


 ルーシアがフォローするように、


「でも、ローザも、かなりパペットを倒してますから、充分戦果、出てますよ。大丈夫、みんなで補い合えば、強敵でも倒せます!」


 クレイドが、ルーシアの戦果を思い起こして、ふと思った事を、聞いてみる。


「あの「踊る剣」があれば、ルーシアも普通に狩りも出来るんじゃないか?」


 ルーシアは、少し言いづらそうに、クレイドにこう答える。


「あれは、使える時間制限があるんです。他のアイテムも、消費系アイテムばかりなので、普通の狩りに使うと大きな赤字になります。私は、合成でLV上げできますので、主にBOSS戦だけの参戦になりますね」


「それはある意味、BOSS戦での切り札的な役割になるね。次も期待して、いいかな?」


 ゼクロスの問いに、ルーシアは愛らしい笑顔で、


「はい、任せてください!」と答えた。


 ルーシアも、今回のBOSS戦を通じて、少し自信がついたようである。


「じゃあ、次のBOSS戦に向けて、ガンガンLVあげるわよ、みんな!」


 エリシャが、まとめるように言う。


 …こうして、2番目のボス、「ヘルクラウン」を撃破したゼクロスPTは、次のBOSS戦に向けて、狩りと冒険を楽しみながら、LVを上げに、かかるのであった…。




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ツインクラス・オンライン 夢月 愁 @214672

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