愛したその時のその人を閉じ込めて

主人公のマナミはイケメンの訪問販売員から不思議な透明な箱を買います。
それは「愛していた人の好きだった時のコピーを永遠に閉じ込める透明な箱」。(箱はミニチュア)
夫は最近横柄になり、お腹も出てきた、ハゲてもきたし、変わってしまった。
優しくてカッコよかったあの頃の夫を箱に閉じ込め、嫌なことがあると箱に思いの丈を言うと、優しい言葉が返ってくる。

だが、その箱を持っていたのは自分だけではなくて――。

とても面白く考えさせられお話でした。
マナミは、途中でその透明な箱を持っているのが自分だけじゃないと気づき、また、その有り様に嫌悪感を抱きます。

確かに他の人に比べればマナミの箱の使い方はまともに思えます。けれど、突き詰めれば一緒なんですよね。箱に閉じ込めた今のひとを見ていないと言う点では。

以下、ラストに触れます。






ラストはそれに気づき、また、夫も謝ってくる。変わるからという夫に「今のままで良い」と言って、透明な箱を仕舞う。

マナミは現実世界に帰ってきたのだと思いました。

好きな相手の理想だけを閉じ込めておける箱は、ある種、麻薬のようなものだと思います。
それを断ち切れたラストには、素晴らしく清々しい読後感がありました。

作者さまの素敵な感性が光りました。

オススメします!
ぜひ読んで見てください。

自分だったらどう使うだろう――そんなことも考えてしまうお話でした。

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