第40話 世界の変化
「それでは7月度店長会議を始めます。」
カズトが居酒屋”新世紀”の事業部長となる辞令が発令されてから3年がたった。2035年。
とうとうカズトは株式を51%取得して、経営権を握り、社長兼居酒屋”新世紀”事業部長となった。
本山社長は会長職となり、株式会社スタイルイーツの実際の運営はカズトが掌握した。
2035年現在、株式会社スタイルイーツの飲食店舖は121店舗となったが、うちロボットの店長が100を超える。社員は約300名?(名で良いのか)のうちロボットが8割、外国人が2割、日本人社員は経営層を中心に本社にわずか数名となった。
創業家の本山家、一部の幹部にニホン人が残るがもう現場労働をしているものはサイタマ新都心オオミヤ店の佐山店長のみとなった。
「辞令があります。
サイタマ新都心オオミヤ店店長佐山君を、居酒屋新世紀事業部の事業部長に命ずる。」
ロボットばかりとなった店長たちからざわめきは起きなかったが異例の人事だ。社員からほとんどニンゲンがいなくなる中、事業部長に抜擢されるとは。
「はい!」佐山はしっかりと返事をした。動揺はない。当然ととらえているようにも見える。
「佐山さん、われわれ飲食店はニンゲンの食事動機を満たすのがシゴトだ。しかしながら、当社にはほとんどニンゲンがいなくなった。ニンゲンの本当の欲求をとらえるためにはニンゲンの意見を聞かなければいけない。われわれの顧客はニンゲンであるから。
ワタシがあなたに求めるのはAIの分析力だけでは対応できないニンゲンの肌感覚だ。」
「なるほど。ワタシもこうなることは少し予想していました。ありかなと。」
「さすが佐山さん。あの”地獄谷の700日間”の特訓であなたにはワタシの考えがしっかりと刷り込まれているのですな。ワタシの思考法則をあなたは熟知している。
そしてワタシも佐山さん、あなたという存在を熟知している。今のあなたはスタイルイーツを繁栄させることを主目的としたマシーンだ。ロボット的でもある。」
「ありがとうございます。居酒屋”新世紀”事業部の売上が向上するように努めさせていただきます。」
辞令を受け取り佐山はあらためて思った。カズトは決してニンゲン排除・ロボットファーストという考えではない。株式会社スタイルイーツを繁栄させるという使命を果たす施策の結果としてロボット政策を推し進めているだけなのだ。
しかし、佐山のように労働市場で勝ち残っていけるニンゲンはごくわずかとなった。
ロボットの勤勉で正確なシゴトぶりと対等に渡り合える能力のあるニンゲンはほとんどいない。
佐山のような存在はニンゲン界のごく一部の勝ち組でしかない。
大半のニンゲンはロボットたちがアホらしくてやらない単純労働で日当をもらってその日を生きる奴隷となった。
逆にロボットたちはその知性をフルに活用するため、単純労働から脱却し、企業経営に携わることを主なシゴトとするようになった。
佐山のようなニンゲン以外はロボットの奴隷となり、言われたことだけこなし日当をもらうことしかできない存在となった。
2035年においてもはやこの流れは止められない。
ニンゲンがAIに支配される方向性は不可逆的事実となりそうだ。
ヒト型AIロボット店長カズト @YeZhetai
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