夢幻空間をたゆたうような、不思議な小説体験をしました。
いつかどこかで駆けっこをした「あなた」を希求する「わたし」の思いが、美しいリズムの文の連なりとなって、壮大な文学的宇宙空間を織り上げていきます。多元宇宙→ペン・ローズのツイスター→クロワッサンという発想の発展や、「光子人類」という概念がSF的で面白かったです。
光とビット、現象となった「わたし」たちがいつかどこかで交わることを夢見て、可能性を試行し続けているのかなあと思いました。
特に好きな文は「わたしは現象する」です。あ、人間って現象していいんだと気づかされました。と同時に、現象する存在にならざるをえなかった「わたし」の渇望が伝わってきました。おそらく半永久的に彼女は走査し続けるのでしょう。その執念の深さに思いを馳せながら読み終わり、タブを落としました。