ep3-6

 駅前通りは今朝と打って変わっていました。各方面から到着した寝台列車やバスから続々と観光客が降りてきて賑わってました。


 薫さんと私は市場にタイル張りの商店街をノープランで闊歩しています。


「光莉はさ」


「なんでしょう?」


 街並みに眼をやっていた私の横で薫さんが藪から棒に尋ね始めます。


「どこを目指してるんだ?」


「目指す場所?」


 何の話か本気でわかりません。というか読めません。さも私を一流アスリートと勘違いしているのでしょうか。


 小首を傾げていると察して補足します。


「クリスカのメイドになりたいとかって」


 なんだか勘違いされていました色んな意味で。


「メイドではなく眷属ですね」


「失敬。眷属になってどうしたいのか、気になってな」


「そうですね。一緒に旅したいです」


「今もしているだろ?」


「しているんですけど」


 頬をポリポリと人差し指で掻いて照れ笑みを浮かべます。


「従者として、一緒に居たいんです。母がクリスカさんのお父様と過ごしているように」


「? ということは君はクリスカと姉妹なのか?」


「えっと違くて、母と父は人間です。生まれて間もなくして母が屋敷に戻ったのであまり接したことはないんですけど、母へ会いに屋敷へ出向いたとき、主様に仕える母の姿がエレガンスで凛々しくて、私もあんな風な従者になれたらと思ったんです。だから、もっとクリスカさんに相応しくなれるように一緒に旅をして頑張っていると言いますか」


「ほう。それで、君はクリスカとどうしたいんだ?」


「どうしたい……」


 私は訝しんで黙りこくります。


「難しい質問です。私はクリスカさんに付き従いたい。旅に連れ出してくれて、私を救ってくれた恩返しがしたい。一生をかけて、あのお方の傍に居たい。多分、間違った答えかも知れないんですけど、私が私でいてクリスカさんの元でお役に立てることと言ったらきっとそれくらいしかないんです。血とこの身を捧げることしか、恩返しにならないと勝手ながら認識していて」


「そうか……叶うと良いな」


 そっぽを向いてぶっきら棒な返事をした薫さんに少し苛立ちましたが抑えました。私って偉い。


「なんだか他人事みたいです」


「いや、本気で思っているさ。君とクリスカには救われたから、本心でそう願っているよ」


「そ、そうですか」


 今度は私の眼を見つめて薫さんが言います。交わされた目線は暫く途切れない。恋人同士が言葉を使わずに愛を確かめているようにも思いました。


 ふっと現実に回帰して照れ笑みを一瞥させながら、私は他の方を向きます。


「そ、それでサプライズはどうしますか。任されているんですから私達」


「だな。と、そうだな。今思いついたんだが」


 一軒のお店を彼女が指さして、


「アレなんかどうだ?」


 尋ねられ、私は二つ返事で答えました。

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