エクスプロージョン このめづき
このめづき
エクスプロージョン!?
「どうしようこれ、やばいよね……え、どうしよう。やば、どうしよ!」
「まあ落ち着きましょう、
「その話題で心が静まる予感がしないよっ!」
「ツッコミができる辺りは流石ですね」
何故なら。
「どこなの、ここ⁉ 何で⁉ 何で急に異界に迷い込んじゃってんの⁉」
そう、ボクたちは今、異界の森にいる。
周囲は不気味な枯れ木に囲まれ、空は赤黒く、どこからかキリギリスのような鳴き声が絶えず聞こえている。空気はやや冷たく、されど瘴気に満ちていた。もう数分でもここにいれば気が狂ってしまいそうだし、源がいなければもう既に狂ってしまっていただろう。この異様な世界は、まさしく異界と呼ぶ他ない。ついさっきまで、ボクらは何の変哲もない平和な町にいたというのに。
事の発端は、昨日に遡る。
いつもの下校ルートで工事が行われていたので、ボクは少し回り道をすることになった。そうして線路沿いに歩いていたのだが、ちょうど線路のカーブの所で、扉を発見した。
線路と道路を分かつ鉄格子に、不自然にはまっている洋風の扉。
鉄道会社の人などが、外から線路に入るために設けた扉なのだろうか。いや、だとしても、洋風の木製扉にする必要はないだろう。何故そこの意匠を無駄に凝ったのだという話だ。周りの鉄格子は無骨この上ないデザインなのだから、なおさらだ。
ボクは少し不思議に思ったが、それも「興味があるか?」と問われれば「どちらかというと無い」と答える程度の興味しか無かったので、何度か振り返るくらいであとは寄り道もせずまっすぐ帰った。
……やっぱりちょっと気になったから、帰ってから、弟に訊ねてみたが、
「扉? いや、知らないけど」
と、あえなく首を振られ、肩を落とした。
それから話は少し飛んで、つい一時間前。
放課後、ボクは源と話していた。
「狭山さんは電車通学ですもんね。いいなぁ。私はほら、寮住まいですから、ちょっと憧れます」
「そういうものなの? うーん、今まで思ったことないからなぁ」
「寮生は皆ことごとく定期券というものに憧れるんです。何でしょう、定期を提示すると大人になれるような気がするといいますか」
「いや、別に通学定期だから、それほど大人というわけでも……」
ICカードだから、提示するというのとも、ちょっと違うし。
「羨ましいです……あ、じゃあ一回でいいんで、交換しましょうよ」
「無理だよ」
「ですよね……」
少し俯きがちにしょぼくれる。そんな姿が、かわいいな、と思う。
源は一年の美術部の後輩で、少し栗色がかったショートヘアが印象的だ。
今日は美術部の活動はないものの、美術室は毎日空いている。だから、部員は、こうして互いに暇を見つけては美術室に行って駄弁っていることが多い。
「はあ」
源がため息をついた。
ずっと落ち込まれているのもバツが悪いので、話題を逸らそうと、ボクは「そうそう」と前日見た扉の話をした。
「うわぁ、絶対それ異世界に続くやつですよ!」
食いついた。もともと怪奇現象とか都市伝説とか、オカルトチックなものが好きな子なのだ。とはいえ発想が突飛で、少し狼狽したけども。
「そ、そうかな」
「あそうだ。ね、狭山さん、今からそこ行ってみましょうよ!」
「え」
思いも寄らないお誘いで驚いてしまったが、正直、嬉しかった。
「……いいよ」
「やったぁ! じゃ、ほらほら、準備してください」
「ああ、うん……」
心を踊らせながら、そしてそれを気取られないように気をつけながら、鞄を手に取る。
……ボクは源が好きだ。
そして、今に至る。
あの後ボクらがしたことと言えば、せいぜい扉を開けて中に入ったことくらいだ。それだって、制止するボクを振り切って源が勝手にしたことだし。
気がつけばここにいた。背後に、さっき通ってきた扉は残っているのだが……
(ガチャガチャ)
と、この通り、ノブをひねろうとしてもピクリともしない。
扉を調べていた源が振り返って言う。
「ここがどこなのかは分かりませんが、入口が開かない以上、出口を見つけるしか無さそうですね」
「よ、よくそんなに落ち着いていられるね⁉」
ボクはこんな慌てふためいているというのに。
「まあ慣れてますから。こういうの」
「ああ……いつも言ってる、フザキって人?」
「はい」源は苦笑した。
源にはどうやら、フザキという幼馴染がいるらしい。確か下の名前は、ソウとかいったはずだ。詳しくは教えてもらっていない。それだけ嫌な思い出でもあるのかと思いきや、その話題が出た時の源は、今も然り、そう嫌がっているようには見えないのだ。ボクは誰だか知らないが、源にここまで慕われている彼にやや嫉妬してしまう。
そのフザキは霊能力者だか陰陽師だかの家系らしく、中学時代は源も何度かその任務に付き合って、とても人には言えないような経験をしたらしい。それで、慣れているというわけだ。ちなみに、源のオカルト好きもその影響なのだとか。
「さて、こういう時、まず何をするか分かります?」
「わ、わかんないよっ。え、えと、点呼とか?」
「まあ確かに一人減ってたり増えてたりする可能性があるのでそれも大事ですが……あ、どうせなら一回やってみますか? イチ」
「え? え……ニ」
「サン」
「増えた⁉ ……っていやいやいや! 怖がらないよ⁉」
「まあ、ですよね」
今のはもちろん、源の「サン」だ。いくら今のボクが錯乱しているといっても、目の前で言われたのではビビらない。
「冗談はさておき。こういう時すること。正解は、電波チェックです」
源はスマートフォンを取り出していた。
「あれ、電波は入ってるみたいですよ」
そういって、画面を見せてくれる。覗き込むと、確かに圏外とはなっていない。微弱ながら、電波の受信はできているらしい。電波があるというのは少し心強い感じもした。
「どうやら、完全に異世界ってわけじゃないみたいですね……あ、ほら、位置情報も」
そういって開いた地図アプリは、現在地が線路の中であることを示していた。
源は何やら「となると、精神体への非連続位相干渉かな……狭山さんもその一つなら……いや、でも……ブツブツ」などとブツブツ呟いている。
やがてまとまったらしく、提案する。
「とりあえず、歩いてみましょう」
「え……離れて大丈夫なの?」
「だいじょばないかもしれません」
「な――」
ボクは絶句したが、源は「大丈夫です。ですが、歩きながら説明しますね」とスタスタ行ってしまう。ボクは慌ててついていく。
源は、極めて冷静に続ける。
「私の経験上、こういうのはタイムリミットがあるんです。つまり一定時間この世界にいると帰れなくなるってことですけど、同時に、この世界には多分、端っこがあります」
「は、端っこ?」
「はいです。崖とか川とか、何でもいいですが、その先は何もありませんよって所があるんです。今回だと、入口が扉だったことを考えれば、そうした端っこも扉になってる可能性が高いですね。ほら、扉は部屋と部屋を区切るでしょう? ですから、簡易的な結界になりうるんです。私たちは今、その結界に閉じ込められています」
「は、はあ」
正直言ってることはよく分からない。けど、少しずつ、心が落ち着いてきていた。
ボクを先導する源の姿は頼もしくて、何だか自分が情けなく感じてしまう。もちろん、ボクはこういう異常現象に関わったことはなく、彼女のほうが経験豊富なのだから、ボクが頼りないのは当然で、引け目を感じたりだとかする必要は全くないのだが、そう頭では分かっていても、心からそうした思いが湧き出てきてしまう。何でだろう。源が年下だからかな。ボクには弟がいるぶん、年上としてしっかりしていなきゃ、という気持ちが強いんだろうか。
……とはいえ、その弟にも頼りっぱなしなわけだが。特に恋愛関連。完全純真無垢なボクと違って、一つ下の弟――
そんな事情があって、ボクは昼に恋愛相談を時折持ちかけているのである。昼は昼で、「仕方ない、女心というものをレクチャーしてあげよう」と不遜な態度で来るし……あいつ、多分彼女の前ではめっちゃカッコつけてるのだと思う。
一〇分ほど歩いただろうか。
「にしても、刺激が足りないですね」と源が言った。「せっかく異界っぽいところに来たんですから、妖怪とか魔物とか出てきてもいいじゃないですか。それがどうです?
「いいよ……そんなのいなくて」
「このままだと、何も見られずに脱出しちゃいますよ」
「平和が何よりだよ」
「まあでも、こういうこと言うとフラグになって大体出てきますよね」
「何でそんな事――おわっ」
源が突然立ち止まったので、殆ど密着状態で歩いていたボクはぶつかりそうになってしまった。
「な、何?」
「しっ」
いつになく源が真剣な目をしているので、どうやらただ事じゃないらしいと分かる。
「あれ、見えますか?」
そう言って、右手の方を指さした。そちらを見ると――
闇があった。
ヒャッと思わず声を出しそうになったが、源に塞がれる。え……っていやいや、照れてる場合じゃないぞボク!
一応言っておくと、唇で塞がれたとかそういう意味ではない。左手を口に押し付けられているというだけだ。でもあったかい。二重の意味で心臓をバクバクさせながら、源と一緒に一歩一歩後退する。
闇は、形があるといえばあるし、無いといえば無い。この異界に入ってからずっと感じている瘴気を、うんと高密度にしたみたいな気配を感じる。
「落ち着いてください。……えーと、こう口塞いでおいてから言うのもなんですが、多分ヤツには気づかれてます」
ボクは声を出せないので、どうにか目線だけで疑問の意を伝える。
「詳しいことは省きますが、おそらく、この世界はヤツが私たちに見せている幻覚です。必要なことは後で説明しますから、とりあえず今は、ヤツを刺激せずにこの場を離れるということだけを考えてください」
頷いた、ちょうどその時。
(♪〜♪〜♪)
「な――」
携帯電話の着信音。しかもボクのだ。今ほど電波を恨んだことはない。
慌ててポケットから携帯を取り出そうとするも、焦っているせいで手元がおぼつかず、落っことしてしまった。
瞬間、世界が揺れた。
「ヤツの咆哮です」ボクを落ち着かせるように、源が解説してくれる。「完全に狙いをつけられました。逃げましょう」
ボクはなんとか携帯を拾って、源と一緒に一目散に逃げ出す。ちなみにボク、殆ど涙目である。
怖い! ヤダ! 死にたくない!
後ろから闇が追ってくる気配がする。走っても走っても、一向に距離が広がる気がしない。
「っ!」
珍しく源が冷静さを欠いて、息を呑んでいた。
その声に、無我夢中で走っていたところから我に返り、眼前に塀があることに気がついた。
振り返ると、闇はもうすぐそこまで迫っていた。
万事休す。
ボクはそう悟って、目を閉じた――すると。
世界が光った。
遅れて、さっきと同じような世界の揺れ。闇の咆哮だろうか。しかし、さっきよりも苦しがっている。そんな感じがした。
目を開くと、そこには――
「昼⁉」
「お待たせ!」
我が弟、昼が闇を食い止めていた。その右手には、光っている何かが握られている。そこから発せられる光でよく分からないが、御札のような形だ。
「な、何でここに……」
「詳しくは後で! 今はこいつを何とかするのが先!」
正直頭には疑問しかないのだが、持てる精神力を総動員して振り切る。
「どうすればいい⁉」
「俺が合図したら、右に全力ダッシュ! そっちに仕掛けた罠ではめる!」
「了解!」
「いくよ……イチ、ニ、サン! 走って!」
ボクと源は、言われた通りに全速力で走った。不思議と体力的な疲れは感じない。火事場の馬鹿力とかいうものだろうか。
感心するのはやはり源の適応力だ。多分この子、昼が誰なのかも分かっていないだろうに……。
世界の揺れ。もう三度目ともなれば、慣れたもんだ。サッと後ろを振り向くと、昼も走ってきているのが見えた。
(ザン!)
擬音語にするならそんな感じの、歯切れのいい音が聞こえた気がした。
見れば、闇が細切れになっていた。
気が緩んで減速したら、「前見ろ! 走れ!」という昼の怒号が飛んできたので、反射的に前を向き直した。あ、あいつは全く……なんて考えていると。
後ろで、とんでもない轟音が聞こえた。
爆発だ。
振り返ると――
*
ベッドの上だった。
「ありゃ?」
アホみたいな声を上げてしまった。え、えーと……夢オチ?
でも服が軽い……あれ、いつものパジャマと違う⁉ っていうかここどこ⁉ そして筋肉痛!
目覚めたばかりなのに、とても忙しかった。新規情報が多すぎて、ショート寸前だ。
「あ、起きた?」
誰かの声がした。その方向を見ると、昼だった。昼は文庫本を閉じる。……普段本なんて読んでないだけに、異様なミスマッチを見せられた気がする。喩えると、子役と生ビールみたいな。
……それはさておき。
「え、何? どういうこと?」
正直何が分からないのかも分からない状態だったので、質問すべきことの整理もできず、そんな漠然とした問いかけしかできない。しかし、昼はボクの疑問を理解してくれたらしい。
「ここは病院だよ」
そうして、全て説明してくれる。
扉を開けた時、脱線事故が起きて、ボクと源は巻き込まれてしまったこと。
とはいえ、奇跡的にも飛んできた石がかすめたとかその程度で済んだこと。
そうして気を失ったボクらの魂が、もとからあの地に憑いていた地縛霊的なものの作り出した結界に迷い込んだこと。
前日に扉の話を聞いていた昼は、もしやと思って見に来たところ、地縛霊を確認し、さらにちょうど事故の瞬間に居合わせたこと。
地縛霊は、実は意識のない人間にしか干渉できないくらい弱かったこと。
ボクたちは病院に運ばれてから丸一日眠っていたこと。
あれは幻覚だけど、使った体力はちゃんと肉体に返ってくること、だから今筋肉痛になっているということ。
「……そして、結界への侵入とか御札とか罠とか、霊的なこと全部請け負ってくれたのが、俺の彼女、
そういって、昼はその隣に座っている女の子を指した。女の子……妖崎は、ボクに対して会昼する。なかなかに美人な子だった。特記すべきは、やはりその白い髪だろう。だが、外国人でも、ハーフでもなさそうだ。アルビノとかいうやつか?
でも、なるほど、彼女の前だから文庫本なんて読んで気取っちゃってたわけか。納得した。一人称も普段と違って「俺」になってたし……って、あれ? 何か引っかかるような……。
「……想」
後ろから声。ちなみにボクの隣のベッドには、同じく入院することになった源がいる。……うん。うん⁉
「え、じゃあ、もしかしてこの子がフザキって人、なの……?」
源に問うと、気まずそうに頷いた。
…………。
女かぁぁ……
てっきり、ソウという名前の響きとか、幼馴染という先入観から勝手に男かと思っていた。でも、冷静に考えれば男女どちらでも使える名前だ。
……いや、女だからどうって話でもないんだけど。幼馴染ってのは変わらないし、恋敵でなくなるわけでもないし。だって、ねえ?
……まあ、それはいい。
問題は、何だかちょっと雰囲気が微妙になってしまったことだ。二人の間に何があったのかは知らないが、多分、嫌なことがあったんだろう。
耐えられない。ボクはこの空気に耐えられるほど、強い人間じゃない。
「……そういえば、あの時携帯が鳴ったんだけど、何か知ってる?」
「あ……それは多分、ウチの使った妖術のせいです」
昼に訊いたつもりだったが、代わりに妖崎が口を開く。ちょっと訛りがあった。どこの訛りかは分からない。
「改めて説明しますと、ウチがあの時使った妖術は二つ、結界をこじ開けるものと、昼君と通信するものです。札と罠については妖具でして、ちょっと別のものです。通信の妖術というのは、感覚の共有と言うべき妖術でして、その影響で、携帯電話に何らかの異常が起きたのではないかと思われます」
「通信? 感覚共有? でもそれって、魂とか直接つなぐものじゃないんですか?」
「いえ、今どきの妖術は、電波で通信するんです」
「現代的!」
え、今ってそうなの? それ、科学? 魔法?
まあ、とりあえずこれで疑問は晴れた。ついでに分かったことがもう一つ。昼と妖崎があの時感覚を共有していたから、あの時昼は「俺」って言ってカッコつけてたんだな。
「えーと……妖崎さんは、霊能力者なんですか?」
「少し違います。我が妖崎家は、代々ヨウ退治を生業としています」
「ヨウ?」
「説明が難しいので、とりあえず妖怪みたいなものだと思ってください。……だから、実をいうと、今回みたいな
「え、えーと……」
なんかすごいプリプリしていた。魑魅というのはあの地縛霊のことかな? よく分かんないけど……。
あ、そういえば、もう一つ分からないことが。あの扉は結局、何だったんだ? てっきり地縛霊が幻覚で見せていたものだと思っていたが、地縛霊はそれほど強くないというから、それは無い。となると、あの扉はやはりもとからあったもの……?
そんなことを考えていると。
「……想」
再び源の声が聞こえて、ボクの表情が凍りつく。
いやこういうのも何だけどさ……せっかく話し逸したんだから、ぶり返すことないじゃんかよぅ……。
「ごめんなさい!」
気づけば、源が謝っていた。……なぜ?
「いや、
「違うの! 駄目なの!」源が感情を高ぶらせた。「ずっとずっと、謝りたかったの! 謝っても取り戻せないのは分かってるけど!」
源の目から涙が出ていた。この子も泣くことがあるんだなと、見当違いな感想を抱いた。
「でも、赦せなかったはずなのに! 段々、想のことを忘れて、自分のことを赦しちゃいそうになってる自分がいて! それが、それがもっと嫌で! だから!」
「夢! ……いいの。もう、いいんだよ」
「よくなんかないよ! ……あのね、想。私、ちゃんと反省したよ。それが、せめてもの償いだと思うから……」
…………。……やばい、これ、思っていた以上に重い話っぽいよ。源のせいで妖崎の肉親が帰らぬ人になったとか、そういうレベルの話が来てもおかしくないよ。どうしよう、心の準備が――
「ちゃんと反省して『大判焼き』って呼び名も許せるようになったよ!」
しょうもねぇぇぇえええええ!
「あ、あの、何の話なんでしょうか……?」
「ん? あれ、もしかして聞いてねえの?」
昼が不思議そうに訊ねてくる。
「何を?」
「いや、二人が『大判焼き』と『回転焼き』の呼び方でモメて、ケンカ別れした話」
「やっぱしょうもなかった! え、なに、じゃあ、二人『今川焼き』でケンカしたってこと⁉」
『今川焼き⁉』
「反応すんな!」
う、うーん、なんだか嫉妬心とか抱いてたのが馬鹿らしいような……。
あ、ちなみに、源の下の名前は夢だ。
「あれ、何で昼は知ってたの?」
「俺は想から教えてもらった。にしても、てっきり、好きな人の大事な話だし、既に聞いてるもんかと……」
再び凍りつくボク。それを見て、何か察した様子の昼。慌てだす。
「あれ⁉ ま、まさかこれ、え、もしかして……まだ伝えてなかったの?」
あー、昼はもうボクが告白を済ませてるものだと思ってたのか……何でだろう……。
源が口を開く。
「……え? 好きな人? 何の話ですか? あれ、狭山さん?」
……こういうバレ方しますか。しちゃいますか。
やがて悟ったらしい源が後ろで焦りだした。
「え⁉ そ、そそ、そういう、そういう話なんですかっ、狭山さん⁉」
……腹括るか。
「源! ボクは君が大好きだ!」
「はい⁉ え、告白⁉ それは告白なんですか⁉」
「もちろん」
「え、何でそんな急に潔く⁉」
源が顔を赤く染めていた。嬉しいな。全く気が無かったら、こうはならないだろう。
本来ならボクが顔を赤くしなきゃいけない気がするが、さっき腹括ったから、今のボクはもういっそ清々しく、何の恥じらいもない。
「そ、それはつまり、私に恋人になれということですか⁉」
「そんな命令口調ではないけど……うん、付き合えたら嬉しいよ」
「つ、付き合って一緒にブランコ乗ったり、枕共有したり、浮気チェックしたりするんですよね⁉」
「なんか恋人のイメージが偏ってない⁉ ……でも、別に、やりたいことやればいいんじゃないかな。ボクとしては、告白した時点でなんかもう満足しちゃってるわけだけど……」
すると昼が「いやいや、スタートライン立っただけで満足するなよ!」と茶々を入れてきたので、睨みつける。
「そ、その!」
「なに?」
源の決心を待つ。
「す、すぐにというのは難しいので……その、しばらく、返事は、待ってもらってもいいでしょうかっ!」
「もちろん。もう数日は入院っぽいからね、考える時間はたっぷりあるでしょう」
「う……」
源が俯いてしまった。
かと思えば、バッと上げて、昼に視線を合わせた。
「そ、そういえば、その
「紹介してなかったね。ボクの弟の、昼だよ」
昼が会釈して、それから「こっちも改めて紹介しておこうか。想のことはさっき紹介したけど、逆はまだだったもんね」と言った。
「想、まあ知ってるとは思うけど、この人が俺の姉貴ね」
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