11話(その後)

「…いーちゃんってそんな口調だったっけ?」

 ある日の楽屋。珊瑚がそんな突拍子もないことを言い出し、思わず顔を背ける。

 俺と伊織さんの入れ替わり騒動は終わり、あの翌日本物の伊織さんがお見舞いに来た。彼は何も記憶にないようで、初対面の挨拶をしてきた。

 俺の容体も回復し、少しずつアイドル活動に参加している。

「え?自分は生まれてこの方こんな感じっすよ?」

 さすがに情報なしで伊織さんを再現するのは無理があったようで、敬語の丁寧キャラで通したのは失敗だった。

「てかライブの後!どこ行ってたんですか、探したんですよ」

「え?ライブの後?」

(やっべ)

 どうにかして会話の流れを変えようとするが、珊瑚が心配そうに話し出した。

「もしかして体調悪かったとか?だったらごめんね?」

 伊織さんは話が見えないようで、ぽかんとした顔で珊瑚を見る。

「体調不良?そんなわけないっすよ!自分、昔から身体だけはめっちゃ強くて!病気とか怪我とかしたことないし!」

「えー!すご!!」

 思わぬ方向に話題がそれたが、バレそうになくて良かった。

「…病気も怪我も?」

 伊織さんのその言葉が突っかかった。

(あ…そっか)


 伊織さんも助けてくれたんですね。


「ありがとうございました」

「へ?何がっすか?」

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■俺のフォーカスは間違っていた まとりあ @mato121

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