スキル『真剣ゼミ』のおかげで何でもひとりでやりきれるようになった件
今日崎
1 スキル『真剣ゼミ』
昔から何かをひとりでやり切れたことなんてなかった。
食事洗濯家事掃除。
国語算数理科社会。
漫画ラノベアニメゲーム。
全部途中で飽きてやめてしまう。
なんでも集中力欠乏?のものすごく酷いバージョンらしい。
でも仕方ない。やる気出ないんだから。
今だって備え付けのデスクベッド(背もたれ角度自動調節)から伸びたアームが、運ばれてきた料理を自動で俺の口に運んでいる。
西暦3000年超えてるしこんなの当たり前の生活だ。
みんなわざわざ苦労して料理作ったり食べたり……何もしなくてもいいならそれで良くない?
いや、本当に全く何もしたくないわけじゃない。それじゃ生きてる意味無いもん。
でもなにかに興味を向けてさあやってみよう、やってみました→5分後にはもう満足してる。
新しいものに触れる刺激が欲しかっただけなのかなあ。
僕だけじゃなくて、近頃はこういう症状の人も増えたみたいだけどね。世は大飽和時代。
「元気ー、お母さん『スキル』買ってきたわよ」
元気というのは僕の名前だ。
名は体を表さない。その典型だね。
スキルは国が販売しているよく分からん技術の結集?で、それを使えば中のスキルが本当に身につくんだとか。
『火炎放射』とかなら火吹けんのかな。最初だけ面白そう。
『はーい』
僕は座面のボタン62を押す。すると僕と同じ声で椅子が返事した。
脳集波を使ってやる方が便利だしフリーハンズなんだけど、あれもコツを掴む前にやめちゃったな。
自転車に乗るくらいのコツはいるはず。
「ほらこれ!『真剣ゼミ』だって!あんた普段からそんな寝っ転がってばっかなんだからたまにはなんか真剣にやりなさい!」
母親は部屋に入ってくるなり、僕の膝上に謎のICチップの様なものをぶん投げて出ていってしまった。
なんだこれ?表面を見てみる。
スキル『真剣ゼミ』
何かを真剣に極めたいあなたへ!お客様のやる気を限界まで強制的に引き出し、どんなことも自ら学ぶとこができます!やる気のないお子様の教育にもオススメ!
……
いやこんなん脅育だよ。
怖いよ。
でもちょっと気になる。この僕のやる気を引き出すだって?できるもんならやって見て欲しい。
僕はスキルチップを持って右耳の裏に取り付けられたブレインチップへと読み込ませる。
「スキル発動」
次の瞬間、僕の意識は途絶え、見知らぬ空間へ飛ばされていた。
サイバーな雰囲気の電脳世界に、沢山の画面が浮かんでいる。
『受講ありがとうございます。本ゼミの受講にあたり、やる気スイッチをONにさせていただきます』
どこからか電子音声が聞こえる。
その表現未だにあるんか。科学的にないんじゃなかったっけ?やる気スイッチ。
『実はあります。我々独自の発見である『やる気スイッチ』を起動することで、お客様のやる気を引き出します』
心読まれた。
じゃあやってくれ。
『かしこまりました。やる気スイッチ発動!』
……。
…………ん?
な、なんだこれは。
ま、ま、学びたい!このゼミの端から端まで知らないことを全て学び尽くしたい!何だこの気持ちは!気持ち悪!
禁断症状で足がガタガタしてきた。
今すぐ学ばないと頭がおかしくなって踊り出しそうだ。
『なっ……こ、これは……『やる気スイッチ』が戻ろうとする力が強すぎる……!何とか抑えるので精一杯ッ!ぐぉぉおおおおおお!』
なにやら電子音生さんが頑張っているが知ったこっちゃない。
とりあえず手当り次第学ぶぞ!
まずは手前のこれ!『真剣の使い方』?ふざけてんのか?真剣の意味を履き違えるなよ!でも学ぶ!!
そこからはゼミの学習に没頭した。
電子音声は何やらずっと頑張っていたが、そんなことよりも新しい知識を吸収する快感で頭がいっぱいだった。
こんなに楽しいことが世の中にあったなんて!ありがとう真剣ゼミ!真剣に学んでみるものだ!
そうして全ての講座を学び終えた時には体感半年くらい経っていたが、電脳世界なので現実では1/100の時間しか経っていないらしい。便利。
『はぁ……はぁ…………受講、ありがとうございました。是非当ゼミでの学びを……今後の人生に活かして……ください…………ね…………』
なんだか遺言のように力尽きた電子音声を遠くに聞きながら、俺の意識は浮上するのだった。
【次回 あっ!ここ真剣ゼミでやったところだ!】
スキル『真剣ゼミ』のおかげで何でもひとりでやりきれるようになった件 今日崎 @sign_kyosaki
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