第14話【銃王との邂逅】
レンタカーを返却し、英斗たちは腹ごしらえに店を探していた。サエ子の希望によりファミレスに入った。かなり空いていた。
食事もそこそこに、ほとんど客がいないことを確認してから英斗たちは話し始めた。
「で、これからどーするかと言うと、もう外の世界にこれと言って用はねぇ」
「え、旅はおしまいって事?」
「お前もあんま長いこと学校休んでたらダメだろ」
「急にマトモなこと言わないでよっ」
「いつもマトモじゃないことばっか言ってるみたいじゃねーか」
「もうちょっと色んなとこ行きたいーっ」
「別にいつでも来れんだろが…」
「それはまぁ、そうだけどさ…」
「ただまぁ、俺はまだ帰らねぇ」
「なんでよ?」
「人形職人の野郎に礼をしなきゃ腹の虫が収まらねぇ」
「それは私もっ」
全員が頷いていた。特にヒロ子は柄にもなく強く同意していた。
「あの人形は是非持ち帰って色々と研究したいわ………」
「珍しくヒロ子がやる気を見せている………。まぁそれもあんだけど、クレイオスのやつが接触して来たのも気になってな。またいついきなり現れるか分かったもんじゃねぇ」
「あら、クレイオスと会ったの? 再契約はした?」
「今はまだーとか言っていなくなっちまった」
「それはまた随分と苦労したんでしょうねぇ。あんたクレイオス苦手だものね」
「アイツと話すと頭痛くなんだよ…あぁあのさ、悪魔たちが出てった時って、なんかあったか? 俺の周りで。あの時のことあんま憶えてなくてよ…」
悪魔たちが英斗の体から出ていったのは今から十年前の事である。その頃はまだなんでも屋は開いておらず、英斗と一緒にいたのはヒロ子だけである。
「そんな昔のこと憶えていないわよ…。確かあの頃は、あんたはシティで一番安いアパートに住んでたわね。ボロッボロの」
「そんなことどーでもいいんだよ」
「で………あぁそうだ。近くに教会が出来たのよ、立派な。そこに赴任したのがグローリアのジャンヌ社長。その頃はまだなんでも屋なんてやってなくてシスター一筋って感じだったわね」
「私も知ってるその教会っ。小さい頃ミサに行ったことあるよ」
サエ子は何かを思い出したように讃美歌を鼻歌で奏で始めた。
「そうねぇ…何かあったとすればそれくらいね」
「まさか教会が近くに出来たから天使の力が増したのか? 考えすぎな気もするなぁ…」
「クレイオスなんて、ほおっておけばまた現れるでしょ? 今は人形職人の行方を探すわよ」
「………だな」
英斗たちはファミレスを出た。かと言って行くアテはない。途方に暮れていると、道路を挟んだ向かい側の歩道に知った顔を見つける。
「あそこ歩いてんの…人形職人のやつじゃねーか?」
白いスーツに短髪のサングラスの男。英斗は横断歩道を突っ切ってその男の前に立ちはだかった。男は驚いている。
「ここで会ったが百年…も経ってねぇが、まさかこんなに早く再会出来るとはなぁ」
男は不思議そうにしている。
「おいテメェ…なんか言ったらどうだ? 街ん中だから派手な事はしないと思ってんのか? 場合によっちゃこのままぶっ飛ばしてやる気満々だからな」
「えーっと…。人違いじゃ、ないですか?」
男はサングラスを外す。身に覚えのない顔。いや、英斗は人形職人の素顔は見たことがない。しかし声が違っていた。
「………え、人形職人じゃ、ないのか?」
「人形なんて作った事ありませんけど…」
「紛らわしいんだよ…。あぁ、悪いな、確かに人違いだったわ。すまん」
「そうですか…だったら別にいいんですけどね…」
男はそう言って英斗の横を通り過ぎようとした。しかしそれを後ろに居たヒロ子は制した。
「なに下手な芝居売ってんのよ、エド・ウィンチェスター」
そう呼ばれた男は立ち止まり、サングラスを掛け直して振り返った。
「俺の事知ってんだ。やっぱ俺って有名人?」
「銃王エド。刀王ルギールと肩を並べる唯一の存在。今世における人間側の最大戦力。悪魔も化け物も恐れる二人の超兵器…」
「なんかアイツと仲良いみたいに聞こえるから嫌なんだよなぁ、それ」
「何してんのよ、こんな所うろついて」
「ルギール探してんの。そろそろ決着付けたいなぁと思ってさ」
「あんたとルギールがやり合ったらここら一帯、焦土になるわね」
英斗はヒロ子にそーっと尋ねた。
「あいつなに、有名人なのか?」
「だから言ったでしょ? あいつが銃王エド。この世界から悪魔の九割を滅ぼした男たちの一人。伝説上の生き物ってやつよ」
「人をドラゴンか恐竜みたいに言わないでくれよ…それより君たち、なんでも屋パラサイトの人たちだよね? ルギール見てないか?」
「勝手にシティを解放してどっか行っちまった。それから見てねぇ」
「ふーん…じゃあやっぱり外の何処かにいるっていうのは合ってたか…。分かった、それじゃあね」
「ちょっと待てよ、逆に聞くけど人形職人見てねぇか? なんでも屋ドールマイスターの」
「あぁ、俺と同じ格好してるダサい野郎ね。見たよ」
「どこでだっ!?」
「この街の仕立て屋。何か女性用の給仕服を仕立てていたね、何着も。彼の趣味かい?」
「新しい人形を作り始めてやがんだな…。ありがとよ」
英斗は教えてもらった店の方へ走り出した。仲間たちも後を追った。一人残されたエドはニヤつきながら眺めていた。
「ルギールにやられたのに生きてる男、ねぇ…。すごいのは彼じゃなくてドクターの方ってわけか、なるほど」
エドは足元に向けて手を銃に見立てて引き金を引くフリをした。するとエドの体は火花を散らしたかと思うと、何処かへと消え去ってしまった。
続く
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DEMONS-RECOVER ー悪魔憑きのなんでも屋ー びおら @biolla-kakuyomu
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