第2話 天使様と小テスト
3限目、英語の時間だった。
隣の席からいつも通り小さく天使様の寝息が聞こえてくる、そんな時だった。
「今日の最後に小テストするからなー」
そんな先生の一言で教室が一気にざわつく。
「マジかよ…」
「え、今日テストとか聞いてない!」
「やべ、全然勉強してない」
「天使様はまた満点なんだろうな⋯⋯」
僕も心の声が漏れそうになるくらい、クラスが騒がしくなった。
そんな中、天使様は微動だにせずに机に突っ伏して寝息を立てていた。
「相変わらず天使様は起きないな」
蒼が苦笑いしながら言ってきたその言葉に僕が同意したときだった。
「起きてるよぉ⋯⋯」
僕達の会話にすごく眠そうな声で天使様が返事をしてくれた。
―――もちろんすぐに寝息が聞こえてきたけど。
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授業の最後、宣言されていた通り英語の小テストが配られていく。
「佐伯、天城のこと起こしてくれ」
そう先生に言われて僕は天使様に声を掛ける。
「天城さん、テスト始まるから起きて?」
わかっていたけど天使様は起きなかったから少しだけ肩を揺らした。
すると天使様は少しだけ目を開けた。
「天城さん起きて〜!」
「ん⋯⋯」
「テスト始まるよ!」
「わかったぁ〜」
そう言って天使様は欠伸をしながら起きる。
「⋯⋯筆箱忘れた」
「え?」
「湊くん、ペン貸してくれない?」
僕はそう言われて筆箱からシャーペンを取り出して天使様に渡す。
「ありがと。助かったぁ」
その後先生が10分間だと告げてテストが始まった。
『問1.次の二文を一文にしなさい。I met a girl yesterday. She can speak five languages.
』
『問2.自然な英文になるように空欄を埋めなさい。He had no choice ( ) to accept the offer.』
『問3次の英文を読み、内容に合うものを a〜c から一つ選びなさい。Many students find it difficult to manage their time effectively.One useful technique is to make⋯⋯⋯⋯⋯』
2分ぐらい経って、ふと隣を見ると天使様はまた寝てしまったようだ。
でも、多分いつも通りの満点だろう。
僕はそんなことを考えつつ、自分の答案に集中した。
やがてタイマーの音が鳴る。よし、ちゃんと解き終えた。
先生が答案を回収していく時、天使様の机の前で一瞬だけ立ち止まる。
「⋯⋯やっぱり全部埋まってるな、しかも正しいし」
そう呟いたのが僕の耳に届いた。さすが天使様だ。
天使様が起きたのは終了の挨拶が終わってからだった。隣で天使様が欠伸を一つして顔を上げる。
「終わったぁ⋯⋯湊くん、ペンありがとね」
その声はまだ少し眠たげだった。
その時、蒼が隣から小声で呟く。
「天使様、寝てたのにまた満点って反則だよなー」
そんな蒼の呟きに僕は思わず頷いた。
ろくでなし天使様 ほたてん @hotaten
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