その勇者、最強につき
茶電子素
最終話
俺の名はホセ。
勇者として、現在魔王城の最奥に立っている。
目の前には巨大な魔王がいて、
俺の背後には仲間たち――剣士のレイ、僧侶のミリア、魔法使いのセラがいる。
魔王は笑っていた。
いや、笑うというより爆笑している。
この野郎……
俺たちがここまで来るのにどれだけ苦労したと思っているんだ。
仲間はボロボロ、俺も満身創痍。
なかなかに絶望的な状況だ。
だが、俺は勇者だ。
ここからが本番と気合を入れなおす。
魔王が両腕を振り上げると、灼熱の炎が天井から降り注いだ。
仲間たちは悲鳴を上げる。
「ホセ!危ない!」
レイが叫ぶ。
(――そういえば俺、炎に耐性があるんだった。いや、今思い出した。)
「小さい頃、火山で育った俺に炎なんて効かない!」
俺は炎の中を悠々と歩き、魔王の目の前に立った。
仲間たちは唖然としている。
レイが叫ぶ。
「お前、火山で育ったのか!?」
「ああ、今思い出したんだ!」
いまいち説明になってないが、事実なんだから仕方ない。
魔王は驚いた様子もなく、次は雷を落としてきた。
空気がビリビリ震える。普通なら即死だ。
(――そういえば俺、雷神の血を引いていたんだった。いや、今思い出した)
「母方の祖先が雷神だった俺には雷なんて効かないぞ!」
そう言って雷を素手で掴むと、逆に魔王へ投げ返した。
魔王が一瞬だけ目を丸くした。仲間たちは口を開けたまま固まっている。
「……ホセ、そんな話聞いたことないぞ?」
「いや、今思い出したんだ!」
説明になってないが、事実なんだから仕方ない。
魔王の反撃で、僧侶のミリアが倒れた。
致命傷だ。くそっ、どうにかして助けることはできないだろうか……あ!
(――そういえば俺、蘇生魔法が使えるんだった。いや、今思い出した)
俺はミリアに手をかざし、光を放った。
彼女は息を吹き返した。仲間たちは涙を流して喜んだ。
「……ホセ、勇者って蘇生できるのか?」
「いや、今思い出した!昔、師匠に言われたがすっかり忘れてたんだ!」
説明になってないが、事実なんだから仕方ない。
魔王が咆哮し、巨大な竜へと変身した。
城が揺れる。俺たちは絶望の表情を浮かべる。
万事休すとは、このことか……いや待て!
(――そういえば俺、竜殺しの血統だったんだった。いや、今思い出した。)
「みんな!聞いてくれ。俺の爺さんって竜殺しの英雄だったんだ!だから竜なんて怖くない!」
俺は竜の首に飛び乗り、素手で殴り続けた。
竜は苦しみ、やがて倒れた。仲間たちは歓声を上げた。
「……ホセ、竜殺しの血統って初耳だぞ」
「おう!今思い出したんだ!」
説明になってないが、事実なんだから仕方ない。
竜の姿を失った魔王は、最後の力で呪いを放った。
俺の体が黒く染まり始める。
くっ最後の最後に油断した……せめて仲間たちだけでも……
(――そういえば俺、呪いを無効化できるんだった。 いや、今思い出した。勇者って呪いに強いんだよ、これが)
「勇者の聖なる力の前では呪いなんて効かないぞ!」
俺は呪いを振り払い、逆に魔王へ返した。
魔王は絶叫し、ついに消滅した。
仲間たちは呆然と立ち尽くしている。
「……ホセ、お前こんなに強かったのか?」
「いや、最強の敵を前にしたら色々思い出したんだ」
説明になってないが、事実なんだから仕方ない。
こうして魔王は倒れ、世界に平和が訪れた。
仲間たちは俺を讃えてくれた。だが彼らの目には疑念も浮かんでいた。
「ホセ、お前の設定って……全部後付けじゃないか?」
「設定って言うなよ……」
その勇者、最強につき 茶電子素 @unitarte
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