手紙 親愛なる嘘つきの君へ
アルヴィスへ
やっと、追いついたよ。
村を出てから三ヶ月。あなたが三年かかった道のりを、バロンと一緒に駆け足で追いかけて、ようやくあなたの背中に手が届きました。
正直に言うとね、怒ってたんだよ。
「一番に帰る」って言ったくせに。「待っててくれ」って書いたくせに。
あなたはいつだって調子が良くて、無茶ばかりして、最後にはこうやって私を困らせるんだから。
でも、ここに来るまでの旅で、私は知りました。
あなたがどれだけ多くの人を守って、どれだけ多くの人に愛されていたのかを。
バロンの背中、重かったでしょう?
ルルの街のおかみさんが焼いてくれたパン。
エルフの森の長老様がくれた輝く石。
ドワーフの親父さんが泣きながら託した酒器。
それから、父さんが「あいつと飲むんだ」って大事にしていた特級の葡萄酒。
これが、あなたが世界に残したものの重さだよ。
あなたは一人で寂しく逝ったんじゃない。こんなにもたくさんの「ありがとう」が、あなたの最期を囲んでいたんだって、そう思ったら……私の涙も止まりました。
あなたの剣は錆びてしまったけれど、その輝きは、あなたが守った人たちの笑顔の中に残ってる。
だから私は、もう泣かないことにするね。
さて、これからのことだけど。
私、まだポコット村には帰らないことにしたよ。
最後の手紙に書いてあったよね。
『南の常夏の海』と、『東の砂漠のオアシス』。
平和になったら、私に見せてやりたいって。
その約束、果たしてもらうからね。
あなたの体はここに眠っているけれど、あなたの魂は、きっとまだ風に乗ってどこかへ行きたがっているはずだから。
私の目が、あなたの目になるよ。
私の足が、あなたの足になる。
あなたが書けなかった手紙の続きは、私が書いてあげる。
だから、もう少しだけ付き合ってね。
バロンも「仕方ないな」って顔をしてるけど、準備万端だよ。
じゃあ、行こうか。
私たちの、新しい旅へ。
いつまでも、あなたの幼馴染
エリナより
終戦の鐘が鳴っても、君の足跡はここにある 植月和機 @uetuki
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