長編小説を書くうえで影響を受けた三冊

青切 吉十

「あしながおじさん」「コンスタンティノープルの陥落」「樹影譚」

 そもそも「書くこと」のきっかけとなった作品については、記憶が定かではないので、答えようがない。

 しかし、いまのところ、私が書いた長編三作については、その書くきっかけとなった、影響を受けた諸作品について語ることができる。

 だが、そのすべてについて語ると紙幅を取り過ぎるので、その中から三冊を選んで話したいと思う。


〇一冊目:「あしながおじさん」

 ジーン・ウェブスターの「あしながおじさん」から私が受けた影響は計り知れない。

 まず、主人公ジュディがあしながおじさんに送った手紙のみで進んでいく小説の構成に感心した。

 書簡体小説と呼ばれるものだが、私が「ある人物が書いた記録(日記・報告書)に別の者が注釈を入れる」という形の小説を生み出せたのは、「あしながおじさん」が頭のどこかにあったからだろう。

 二つ目は、さまざまな文体を入り混じらせることによる、多様性に満ちた文章を読むおもしろさである。学生生活を送る中で、ジュディは古英語、ラテン語、フランス語を学び、それが手紙に反映されていく。私も長編小説の中で、本文と注釈で文体や使われる語句を変えたりなどして、そのおもしろみに挑戦した(成功したかどうかはわからないが)。

 文体の多様性で言えば、ジョイスの「ユリシーズ」が有名だが、あれは読むのに骨が折れる。おもしろいけれどね。ちなみに、ウェブスターは「ユリシーズ」が発表される前に亡くなっている。


〇二冊目:「コンスタンティノープルの陥落」

 私は「説明文」の多い小説が好きだ。「描写」は最小でいい。しかし、世の中では逆がよいとされている。

 そんな私に勇気を与えてくれたのが、塩野七生の「コンスタンティノープルの陥落」の冒頭である。「コンスタンティノープルの陥落」の冒頭のような文章だけで小説が書けないかどうかというのが、私が長編小説を書いたきっかけのひとつである(これはむりな話だったが)。


〇三冊目:「樹影譚」

 枠物語という言葉をご存じだろうか。

 「物語の登場人物が作中で別の物語を語るという形式で展開する物語」(広辞苑)とのこと。

 丸谷才一の「樹影譚」は枠物語を前面に押し出した作品で、おもしろいかどうかは別として、非常に参考になる短編であった。

 丸谷で言えば、長編小説を書くうえで、「思考のレッスン」というエッセイにも大きな影響を受けている。

 どういう影響を受けたか書きたいところだが、紙幅が尽きたので、それは別の機会に話すことにする。

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