第2話 目覚めてしまった力

 毬香は1人とぼとぼ歩いていた。ふと、後ろからつむじ風が吹く。

10月中半というとのに、いきなりだったので、驚いた。


「…強い風…」


 さほど気にせずにいたが、前を向いた時に現実的でない光景に、毬香は目を見開いた。


「…どういうこと?風がなんで目の前にあるの?」


 それは、竜巻のように風が回転していて、中から鼬のような手が鎌の動物が現れた。


「…!!」

「ケケケ…あの方が言っていて小娘はお前だな?」

「…な、何?こっちに来ないで!!」


 スクール鞄で追い払おうとした時に、鼬は鞄を真っ二つに引き裂く。


「…えっ…?」

「お前もこうはなりたくないだろう?大人しくオレに殺されな!!」

「や、やだ…!!」


──私、ここで死ぬの?嫌だ、そんなの嫌…!!


 目を瞑った瞬間、誰かに腕をぐっと引っ張られる。


「…か、和くん!?」


 目を開けた先には、幼なじみの和弥がいた。だが、姿がいつもと違った。

いつもは、黒髪で黒目であるが、髪は、目は。その姿に毬香はひどく驚く。


「…和くん!?どうしちゃったのその姿!!」

「説明は後だ!!俺が時間を稼ぐから毬は逃げろ!!」

「やだ!そんなの!!和くんも一緒に…!!」

「いいから、早くしろ!!」


 和弥の荒い声に驚き、毬香は逃げようとする。


「そうはさせるか…!」

「俺が相手だ、鎌鼬!」


 毬香が走った時に、後ろから鎌鼬が追いかけようとするが、和弥が札を飛ばして、動きを止める。


「なんだこれは…!!」

「拘束用の痺れ札だ。毬を救う!!」

「…なーんてこんな痺れオレには効かねぇーもんね~」

「…クソッ!」


 毬香は後ろをチラリと振り向き、和弥の心配をする。


──私には和くんを助けることはできないの?私に力があればな…


 毬香がそう思った瞬間、制服のポケットに入れてある、毬の形をした小さいストラップ状のお守りが光る。

 そのお守りは毬香の家にあった、大切なお守りだ。


「…え?なんでお守りが光ったの?」

「ケケケ…!これで終わりだな!」

「そうさせるか!!」


 和弥は長くて黒い筒上の鞄から、刀を取り出す。刀を鞘から抜き、鎌鼬を斬る。


「…ぐっ…なんだ、その刀は苦しい…」

「対妖怪用の刀だ。これで終わりだな」


 和弥がとどめをさそうとした時に、鎌鼬はニヤリと不気味に笑う。


「こーんな傷、あの方からもらった力で治るもんね…!」

「…!!」


 斬った傷はみるみるうちに回復していき、さっきより鎌鼬は黒い邪気が溢れていた。


「…クソッ!」


 和弥は鎌鼬の風の攻撃をとっさに避けられず、右肩に傷をおってしまう。



「…和くん!!」

「毬…早く逃げろ!!」

「…嫌!!お願い、私には力を貸して!!」


 毬香は和弥の前に立ち、ポケットからお守りを取り出し、力を強く願う。


 ──私は和くんに守られてばっかり…こんな私にも和くんを守りたい!

お願いだから、力を貸して──!!



 願った瞬間、毬香からまばゆい光が覆い尽くされる。


「…やめろ、毬!!!!」


 和弥の静止も届かないまま、光に包まれ、毬香は姿を現す。


 巫女装束と天女を掛け合わせた服装に、赤い袴からは、白いフリルがのぞき、紅梅色の羽衣に、赤い鼻緒に白い草履と姿を変えていた。


「…え?何この姿…?」


──その姿はとても美しかった。

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