結びの絆
ことは
第1話 夢の記憶
「…ごめん、守れなくて…」
彼女の亡骸を抱えて、荒れ果てた街の中、少年は一人呟き、涙を流す。
自分の傷だからの身体など、どうでも良かった。ただ、彼女を守れなかった自分が腹正しく感じる。
艶やかな黒髪を髪紐で両方を結んであり、巫女装束と天女を掛け合わせたような美しい着物に羽衣の変わった姿の彼女の亡骸を抱き寄せる。
少年は意を決けしたように、制服のポケットから一枚の札を取り出す。
「…これしかもう手段がない…頼む、俺はどうなってもいい、力を貸してくれ…!!」
少年は呪文を唱え、札は徐々に消えていく。
やがて意識が薄れていき、少年は彼女の隣に倒れるように眠りについた──
「…りか…毬香!!」
目が覚めて、友人の
起きた時に涙を流していた。なんだか、とても悲しいことがあったみたいに感じる。
夢で一人の白髪で目が赤い、傷だらけの男の子が、私に何か言っていたのは覚えてる。
──なんで、そんな悲しい顔をするの?
その子にはなぜか、身に覚えがあり、彼にはそんな顔をして欲しくはなかった。
「…毬香泣いてるけど、どうしたの?昼休みだからって寝すぎだよ?もうすぐ授業始まるよ!」
「…うん、ごめんね。起こしてくれてありがとう」
「次は国語の授業だから、先生、怒ると怖いよ!」
私は頷き、涙を拭いて、佳織は自分の席へと戻っていった。
──授業中、夢の事をぼんやり考えていた。
あの子は、なんであんなに傷だらけなんだろう?私に何を言いたかったんだろう…
「天空さん…!
「…え?は、はい…!」
「ぼんやりしていたけど大丈夫?」
「…すみません」
「もう二年生なんだし、来年は高校受験もあるんだから、気を引き締めなさい。皆さんもね!!」
生徒達が返事をした後、毬香は授業へ集中することにした。
──後でまた考えよう。夢の事は気になるし。
毬香が前を向いた時に、少し離れた席から黒髪で黒目のつり目の少年が不機嫌そう見つめていた。
──帰り道、毬香は夢の事をずっと考えていた。
佳織は部活のため、一緒に帰れなかったので一人で歩いていた。
あの子は私に何を伝えたかったのかな…
ふと前を見ると、同じ中学の男子が歩いている事に気づく。その後ろ姿には身に覚えがあった。
「…か、
少年は不機嫌そうに、こちらを見る。
「…何か用か?」
「…その、珍しく一緒に帰れるなって…嫌だったらごめんなさい…」
和弥と呼ばれた少年は、舌打ちをして睨む。
「…毬のそういうところが俺は嫌いだ」
「…ごめんなさい…」
「だからすぐ謝るな」
和くんとは幼なじみだけど、中学に入学してからなんだか冷たい。私、気に障ること何かしたかな…
「用がないなら、もういいだろ。俺は一人で帰る」
「…わかった」
和弥はスタスタと歩いてしまい、毬香は一人取り残される。
「一緒に帰りたかったな…私も早く帰ろう」
毬香は歩きだし、家路につく。
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