第8話「出発進行!トッキュウガー!」
「カキカキ…カキカキ…」
キシナイトとドラゴンが戦っている頃、カケルは絵をスケッチブックに描いていた。
「出来た!」
カケルが描いたのは白と赤を基調とした色をしているフォーミュラカーモンスター「ゴーゴーマッハ」だ。
「ゴーゴーマッハ!俺をキシナイトの所に!」
「任せろカケル!マッハレーダー起動!」
ゴーゴーマッハはレーダーを起動し、キシナイトの反応を探る。
「見つけたぜ!ここから少し離れた廃工場だ!」
「よし!マッハでゴー!」
「走り出したら後には引けねぇぜ!」
ゴーゴーマッハはカケルを乗せて、出発する。
「気をつけろよ!」
「頑張って!」
ガリル達は見送る。
「カケル…無事に帰ってきてくれ…」
ガリルはカケルが無事でいられるように願う。
「はあっ!やあっ!」
キシナイトは疲れる身体を奮い立たせドラゴンと戦っていた。だが、問題が発生している。効いていない。鉄くずで身体が構成されてるのもあって防御力が上がっているのだ。死体が動いているようなものなため再生能力は恐らく失われているがいかんせん鉄くずが身体に埋め込まれているため剣が当たってもカキンカキンと気味の言い音が聞こえてくるだけ。
「くっ…!」
「あっははは!無駄無駄!そいつは頑丈に改造してるんだ!そんな剣でチクチク刺したって無駄なのよ!」
「貴様…!命を何だと思っている…!」
キシナイトは片膝をつきながらも声は怒りに燃えていた。
「は?さっむ。命を何だと思ってるか?都合のいい道具。これで満足?」
「ふざけるな!!」
キシナイトは狙いを女性に変え、地面を蹴り上げて斬りつけようとする。
「はっ!甘いよ!」
女性はスッと避け、ドラゴンに指示を出し、ドラゴンはキシナイトを尻尾で地面に叩きつける。
「ぐはあっ!?」
キシナイトは地面に墜落し倒れてしまう。限界が近い。再生能力で自分を苦戦させたドラゴンが今度はシンプルに頑丈になり、苦戦を強いってくる。
「くっ…負ける…わけには…」
ドラゴンがジリジリと迫ってくる。
「アンタ…どうやら機械みたいね。じゃあいいわ。バラバラにしてドラゴンの新しい素材にしてあげる。ドラゴン!やっちゃって!」
ドラゴンはキシナイトに襲いかかってくる。
「っ…!」
キシナイトが思わず腕で顔を隠した瞬間。
「若い命がゴーゴーゴー!」
ゴーゴーマッハが現れ、ドラゴンに突進。ドラゴンはたじろぎ、ゴーゴーマッハはキシナイトの前にキキーっとブレーキをかけながら停止する。
「カケル!」
ゴーゴーマッハの操縦席にはカケルが乗っており、カケルはあまりの速さに目を回していた。
「や、やっほ〜…キシナイト〜…おえっ…」
カケルはふらふらな状態でゴーゴーマッハから降りてこれまたふらふらになりながら女性を指差す。
「こ、こら〜…!お前がドラゴン事件の犯人だな〜…!?おえっぷ…こ、この俺、カケルが来たからには〜…おえっ…もう、悪事は出来ないぞ〜…?うっぷ!」
カケルは遂に倒れる。
「カケル!?」
「…何なのアンタ。」
カケルはキシナイトの肩を掴みながら何とか立ち上がる。
「キシナイト!ありがとう!ここから先は俺達に任せてくれ!」
「かたじけない…!」
「いけぇ!ゴーゴーマッハ!」
「スピードボディ!マッハでゴー!」
ゴーゴーマッハはエンジンをブルルルとふかしてそのまま突進する。
「どりゃー!」
しかし、ドラゴンは口をガバッと開けてバクリとゴーゴーマッハを食べる。
「えっ!?」
「あっ…!?」
ドラゴンはくっちゃくっちゃとゴーゴーマッハを味わうが口に合わなかったのかぺっと吐き出す。
「おべえっ!?」
ゴーゴーマッハはよだれまみれで地面に突き刺さる。
「ゴーゴーマッハー!?」
「何でこいつほぼ死んでる状態なのに味わったわけ?食欲だけは死んでも凄いのね…」
カケルは叫び、女性はドラゴンがゴーゴーマッハを味わおうとしていた姿を見て不思議がる。
「か…カケル…!忘れるな…!俺の負けじ魂は…お前譲りだぜ…!」
ゴーゴーマッハはガクッとエンジンを停止し、光の粒子となってスケッチブックに入り、元の絵に戻る。
「ゴーゴーマッハ…!お前の犠牲は無駄にしないぜ!」
「絵が実体化してたって事…?何それ…?そんな魔法聞いたことが…!?」
女性はカケルの能力に気づき、驚愕する。
「いくぞ!出て来い!「トッキュウガー」!」
カケルは声を大にして叫ぶ。するとスケッチブックからプァーンという音が響き、全長5メートル程にデフォルメされた特急列車が伸びてくる。赤と黒を基調とした特急列車だ。
「出発進行!」
「はあっ!?何そいつ!?」
女性は指を差しながら驚く。無理もない。この世界では見たことがない物がモチーフだからだ。ゴーゴーマッハの姿も大概だが。
「ふん!そんな奴、ただの鉄くずじゃない!バラバラにして素材にしてやるわ!」
「それはどうかな!俺がただの鉄くずを描くと思わないことだ!ていうか鉄くずって言うな!誰だって特急列車の運転席には憧れるもんだ!」
「意味分かんない事いってんじゃないわよ!ドラゴン!やっちゃいなさい!」
ドラゴンは襲いかかってくる。するとトッキュウガーはあっさりかぶりつかれる。
「へ?無抵抗!?よっわ〜!何も抵抗しないじゃない!」
「カケル…」
キシナイトは心配そうな目つきで見る。だが、カケルの顔は全く絶望していない。寧ろ自信に溢れ、胸を張っている。
「さあ!トッキュウガー!やっちゃえ!」
「承認!」
トッキュウガーは発進し、ドラゴンを振り払う。そして特急列車にはあり得ない挙動。ジャンプをする。
「行くぜ!変形承認!」
トッキュウガーは六車両ある身体を一つずつに分解。一つの車両から手が生え、もう一つの車両からも手が生える。そして一つの長い車両から腰が生えて体となり、手が生えた車両がくっつく。さらに一つの車両に足が生えまた足が生えた車両が体にくっつく。最後に一番前の車掌室である車両が頭となる部分にくっつく。そして頭となった車両がガコンという音と共に表面だけが体にくっつき胸筋となり、残された頭には隠されていたロボットの様な頭が。
「変形確認!右よし!左よし!正義のレールを突き進む!特急ロボットトッキュウガー!次は我々の勝利に止まります!」
説明しよう!トッキュウガーは普段はトレインモードという一見普通の特急列車だが、戦う時は変形してロボモードとなるのだ!
トッキュウガーはズシンとその5メートルはある身体を大地に落とす。さあ、反撃開始だ。
ピクチャーモンスターズ!〜異世界に転生した少年の絵が大暴れ!〜 和屋るふへ @waya11
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