おなら

夕日ゆうや

俺たちの闘いはまだ続く。

 おなら選手権。

 それはおならでどこまで飛翔距離を稼げるか、という最もアグレッシブな闘い。

 おならで浮遊した身体は最長19mメートルまで飛ぶという。


 俺こと、尾名良おなら郁蔵いくぞうは白いテープラインに足をそろえる。

 隣では半作務ハンサム雷蔵らいぞうがいる。

 どちらもこの選手権において最高クラスのおなら使いだ。

 だが、この俺の三年半に渡る修行の前ではただの前哨戦に過ぎない。

「はは。俺様に勝てるかな? 坊や」

「ぼくにはぶつかってこないでよね」

 おなら選手権において、一番重要視されるのは飛翔距離だ。だがそれだけじゃない。方位角、方向、おならのコントロールも大事になってくるのだ。

 また食事療法も重要になってくる。

 最も良いとされるのはサツマイモだ。

 ここ選手権においても、ケータリングにサツマイモを用意するほどだ。

「さ。各人、テープラインにそろい……え? 飛び入り参加? はい。今、おなら名人であるさついもさんが飛び入り参加ということで」

 札魔芋が俺の隣に来ると、ニカっとハンサムな顔を見せる。

 おなら名人か。

 その名に恥じぬ好成績を叩き出す。

 しかもそのコントロールは絶妙で、高く飛ぶのではなく、水平に飛ぶことができる。

 半作務はやる気を失ったように俯く。

 だが、俺にも負けられないプライドがある。

 ここまで勝ってきたのだ。

 名人と並ぶくらいで負けるわけにはいかない。

 俺が目指すはオリンピックだ。

 こんな関東圏で負けている場合じゃない。

 たくさんお金を稼いで、両親に楽をさせてやるだ。

 待っていろよ。世界!


『さ。各人、スタートラインに立ちました!』

 カウントダウンが始まる。

 このおならに全てを賭ける!

『ゴー!』

 合図と同時、俺は思いっきり噴射する。

『おおっと! いいおならの音だ!』

 解説を始めるアナウンサー諸君。

 名人は空を飛ぶがごとく、飛翔し続ける。

 だが、俺だって負けていない。

 精密なコントロールをしつつ、俺は軌道を真っ直ぐに整える。

「くっ。このままじゃ」

 名人に負ける。

 そんな訳にいくか。

 潰えようというおならをさらに圧縮させて放つ!!

 名人の20mを超えてさらに飛翔する。

『これは! 世界記録突破!!』

 俺は21.5mという超記録を出し、地面に伏せる。

「はは。見たか世界。これが俺の実力だ」

「参ったね。キミ、名前は?」

 名人ににかっと白い歯をむき出しにして讃えられる。


 こんな日が来るとは思ってもみなかった。

 俺は世界への切符を手にしたのだ。


                       ~完~

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おなら 夕日ゆうや @PT03wing

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