第3話・マシーン娘には倒すべき敵が必要

 その日──グレイと妹のガー、それとグレイの後輩でモデルユニットを組んでいる『グレン』の三人は町の発明おじさんがいる町工場にやってきた。


 グレンは未確認飛行物体U  A Pマニアだった。

 口元をマスクで隠したグレンが、グレイに質問する。


「先輩、この町工場にいる発明おじさんって、どんな人なんですか?」

「う~ん、顔色が悪くて横髪がピンピン跳ねていて、科学者気取りな……一目見ればわかる」

 町工場の作業場に入っていくと、作業服を着た女性が、工員にお茶を出していた。

 グレイが、女性に声をかける。

「すみません、博士いますか?」

 作業服姿の女性が言った。

「博士なら、奥にいるわよ……また、変なモノ作っている」

 

 奥へと進むと顔色が悪くて横髪がピンピンと跳ねた初老男性が、作業室で何かを作っていた。

 グレイが親しげに話しかける。

「町の発明おじさん、元気? ちょっと相談したいコトがあるんだけれど」

 作業を続けながら、無愛想に町の発明おじさんが言った。

「マシーン娘たちに、敵が必要にでもなったか……言わなくても顔を見ればわかる」

「さすが、発明おじさん……誰か心当たりはない?」

「ないこともないが……お前さんたち、敵が生物なのと、機械なのとどちらがいい?」


 ガーが言った。

「どちらかと言うと、機械の方がいいです……生き物だと倒した後に辛くなるから……この間も町で、片耳を桜の花びらのような切り込みを入れたネコ怪獣を見ました」

「それは、サクラ怪獣だな……里親を探している保護怪獣だ……機械的な敵なら心当たりがある」

 作業の手を止めた、町の発明おじさんがガーの方を見て言った。

「町の反社会的な組織に『鬼界獣キカイジュー組』という連中がいる……儂が声をかければ、マシーン娘たちの敵を演じてくれるはずだ」


  ◇◇◇◇◇◇


 町の発明おじさんの言葉通りに、鬼界獣組は快くマシーン娘の敵役を引き受けてくれた。

 マシーン娘『ガン』ちゃんの額と、ガーの耳から出る冷凍ビーム。

 ガーの耳から発射された冷凍ビームが、鬼界獣組の炎のブレスを途中で凍りつかせ、そのまま相手ごと氷像に変えた。


『ゲッ』ちゃん姉妹の長女の、おヘソから発射される意味不明の宇宙線ゲッター光線。


 勇者グループの面々も嬉々とした表情で、やられ役の鬼界獣組を蹴散らせている。

『ガオ』ちゃんが黄金のハンマーを振り下ろして叫ぶ。

「これが、勝利の鍵だ! 塵に返れ! ゴルディ○ン・ハンマー!」

 黄金のゴルディ○ン・ハンマーが、敵をぶっ飛ばして鬼界獣組の連中が。

「やられちまったぁ」  

 と、苦笑する。


 グレイの腕が、ロケットのように敵に向かって飛ぶ。

 ミサイルが飛ぶ。

 光線が発射される。

 剣が、銃が、乱れる。


 勢いづいたダンクが、決め台詞を発する。

「やってやるぜ!」


 それに釣られて、他のマシーン娘たちも、決めセリフで自己主張しはじめた。

「あなた最低です」

「淫ら、淫ら、淫ら」

「気持ちいぃぃぃ! 月まで届けパンチィィ!」

「天○突破! ドリルゥゥゥ!」

「あたしは、マシーン娘……涙は出ないけれど……大空、海原、地の底までも変身合体つき進む! ミサイル発射!」

「やらせはせんぞぅぅ!」


 とにかく、マシーン娘たちが生き生きと、欲求不満を解消して『鬼界獣組』の若衆を蹴散らした。

 鬼界獣組の連中も心得たモノで、映画の殺陣たてのように、やられ役を楽しんでいる。


 黄金色に輝くライター着火のアニロボの魂を受け継ぐ、マシーン娘が鬼界獣組の若頭を、えげつない攻撃で沈めると闘いは終わった。


 つわものどもが夢の跡……呻いて転がる、鬼界獣組を眺めてマシーン娘たちは、晴れ晴れとした表情だった。

 グレイが代表して、鬼界獣組の若頭に礼を言った。

「今日は相手をしてくれてありがとうございます……また、マシーン娘たちのフラストレーションが溜まったらお願い」

 倒れてピクッピクッしている若頭の『我羅打ガラダ』が、片手を挙げて。

「おおッ」と答えた。


  ◆◆◆◆◆◆


 マシーン娘たちの平凡な日常が、またはじまる。

 永遠なれマシーン娘たち。

 フラストレーション欲求不満が溜まって、また闘いたくなる、その日まで。


  ~おわり~

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マシーン娘~敵を超高速で迎撃したい♬~ 楠本恵士 @67853-_-

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