靴下

せおぽん

靴下

タンスの整理をしていたら、奥から見覚えのある靴下が片方だけ見つかった。


なんだっけ?この靴下。思い出せない。確か、大切な靴下だったと思うんだけど。


「母さん、何してるの」

レイコが声をかけた。


「あんたのタンスを片付けてたら、ほら。小さい靴下。片方だけだけど」


「あー、それもう片方貰ったよ。思い出にさ。私が赤ちゃんの頃のでしょ?覚えてないけど。スマホのカバーにしたよ」


思いだした。レイコに初めて買ってあげた靴下だ。寒い冬。小さなレイコの足が赤くなって。新米のお母さんだった私は悲しくて。お父さんが買ってきた小さい可愛いピンクの靴下。暖かったからか、くすぐったいからなのかレイコは笑って。捨てるのがもったいない、と取っておいたんだった。


「もう、レイコ。あんた、明日は結婚式なんだから、早めに寝なさいよ」


私は小さな靴下の片方を胸にあてて、ほろりと涙をこぼした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

靴下 せおぽん @seopon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る