第二話を読んだあたりから、
「ああ、これは、『厄介』だぞー?」と、思わずニヤニヤしてしまいました。
これはあれです。
ベケットとか、別役実の世界です。
物語は、
あるクローン技術の権威である鈴木教授の死から始まります。
その事件を、田中刑事が追う、という物語なのですが、
集められた事件の報告書が最初からおかしいのです。
報告書にはそれぞれ、
「トレーラーに激突した」のだが
「鈴木教授は軽症」だの
「鈴木教授は重体」だの
「トレーラーの運転手もろとも死亡」だの
同じ事件のはずなのに、全く別のことが書かれているのです。
だので真相を明らかにしないといけないのですが……
真相を追求すればするほど、
この枝分かれした『真実』は、さらに枝の数を増やし、
田中刑事は二人、三人に増え、
他人だったはずの田中刑事と鈴木教授は友人という事になり、
とにかくキリがないんです。
しかも始末が悪いのは、ここがよくできた設定だと思うんですが……
主人公は狂人でも頭のおかしい奴でもないんですよ。
『警察』なんです。つまり、一番まともじゃないと本来おかしい人間なのに、
主人公の思考がどんどんまともではなくなっていくので読者は混沌へと誘われるのです。
不条理。
本当に好きな物語です。
え? 事件は解決するかって?
わかるでしょそんなこと。
ご一読を!!!