⑤
あまりにもあっけなく“成約”できた。
画面の左上の時計を確認すると取り付けた“約束“まで、まだ1時間以上ある。
念のために早めにアポイント場所へ行って様子を確かめよう。
スマホをテーブルに置いて紙コップのコーヒーに手を伸ばしたその瞬間、サッ! とスマホを奪われた。
「あっ!!」
まだロック状態になっていなかったスマホの中身は“奪った男”に易々と見られてしまった。
「古市クン!」
佐奈の声は震える。
「見たの?」
「削除した」
「勝手な事しないで!!」
「困ってるならオレを使えばいいだろ?!」
「あなたには関係ない!!」
「ある!!大ありだ!」
「どうしてそんな事を言うの? ただのアッシーのくせに!」
「アッシーはもう辞めた」
「じゃあ あなたの価値はもうないわ! スマホ返して!!」
「返すのには条件がある」
「『清楚になれ』とか言ってもムダよ!」
「もっと簡単な事だ!」
「何よ?!」
「結婚してくれ!!」
「はああああ????」
「心が弱っているこのタイミングでこんなこと事を言って来る男! それってズルくない?!」
呟く言葉がそのままポコン! と浮き上がって来るみたいな勢いで、心の中を血が通って来る。
ああこれが
きっと
“恋”ってものの
入口なんだ。
いつしか燈真の胸を涙で濡らしながら
佐奈は初めて知る心地良い幸せに身を預けていた。
百人目はプロポーズ 縞間かおる @kurosirokaede
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