喇叭鳴り空は紅く苦蓬堕ちて
@doraemon-help-me
第1話 実力以外評価する基準がないのが世界
「ダイイングメッセージが不自然な記録として遺る場合は瑕疵ありと判断していい。一例を出そうか。例えば犯人の名字が田口であり、名が鯨費子だったとしよう。その場合、必ずダイイングメッセージは名字になる。画数が少ないからだ。今にも死にそうな人間が鯨費子なんて書くとは思えないしね。より簡潔に、より明確に、ダイイングメッセージは遺る。小説や漫画だけだよ、凝った死者の言葉なんてのは。読み解かせる気がないだろ、あんなもの。だから“ダイイングメッセージそのものが謎になる事件はそもそも人の手が入っている偽造であり捏造である”と私は考えている」
「や。まあ、そうなんでしょうけど。今回の事件はどっちなんですかね?ダイイングメッセージが凝ったヤツって、死にかけの人間が出来る範囲を超えてるようなミステリも確かに少なくないわけですし娯楽作品としては世間一般に浸透しているんですから」
「フフッ。“いるんですから、凝ったダイイングメッセージがあっても不思議ではない”、かい?そんなんあって堪るか。探偵が何人いても足りないよ。そもそもダイイングメッセージなんかレアケースなんだよ?レアケースを凝るなって話だよ、もう」
「しかも、パッと見。“これ、犯人側が残したメッセージ”にも思えますが……?」
「NesT Is yOu!だからね。大文字と小文字を組み合わせたダイイングメッセージってのは元々のメッセージにむりやり挿し込んで違う意味にするってのが鉄板なんだけどさあ」
「大文字だとNTIO。小文字がessyu。これ大文字と小文字だけを読んで『ンチオ エッシュウ』さんが犯人とかで良いんじゃないですか?ぼく達が悩んでいても答えが出るに出ないと思うんですよ。なら、エッシュウさんを犯人ってしてしまってラーメンでも食べに行くのが生産的ですし衛生的だと考えますが……?」
「そんな探偵存在したら最高だよね……」
「アナグラムってんですか?組み合わせだけ考えても途方もないですし、意味の伝わる熟語に出来たとしても複数あります。アナグラないで、そのままの意味として“次はお前だ”の場合だと連続殺人事件に発展する可能性だってあるんすよ?」
「クソ面倒なんだよダイイングメッセージって。なんでアタシ、こんな貧乏籤を引くかねえ?」
「日頃の行いかと」
「まあね」
喇叭鳴り空は紅く苦蓬堕ちて @doraemon-help-me
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。喇叭鳴り空は紅く苦蓬堕ちての最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます