第11話 公共交通機関ママプレイ
目が覚めた。そりゃもうギンギンに目が覚めた。油断すると見惚れてしまうような美少女が隣で見守っているとなれば、平常心で居られないのは男子の性だ。
「ははは、そんな急がなくても良かったのに」
と部活後の夜にも関わらず朗らかな笑顔をされたのは揺れる電車の中。帰りの各駅電車は基本がらんどうで、人目を憚らず談笑できてしまう。
「というか、なんで帰らなかったんだ?」
部活終了後の鬼顧問とのミーティングや自主練は、マネージャーどころか部員も残らない。というか残って欲しくないので無理矢理帰らせている。福路さんにもその旨は伝えた筈だが……。
「いや、その前にそもそも、なんでテニス部のマネージャーをしようとか考えた? 別にこれまでテニス部と関わりがあった訳じゃないよね?」
「関わりなら出来たじゃないですか」
「えっ?」
「私、殿方に着替えを見られたのは初めてで……」
「ぶっ!?」
昼の強烈な下着姿が鮮明によみがえる。押し上げられているシャツの下、今彼女は黒いインナーと刺繍が細かそうな水色のブラジャーを着用している。その事実を思い出して、思わず乳袋に吸い込まれそうになった。
「いや、ほんと、その件は申し訳ないって言うか……!」
「寝ぼけながら母乳を吸おうとしていたのに?」
「断じて無罪!!」
「テニス中も何度も『ママ』って言いかけてましたよね?」
若干憎たらしいジト目は全てを見透かしている。どうやらギリギリまで踏ん張り口をつぐんだはずの『ママ』も聞こえていたらしい。
「本懐ですよ。君のママをやるためにマネージャーになったんですから」
「……なあ福路さん。それは冗談だよね?」
「さあ。お好きなように解釈してください」
冗談の筈だ。何か別に理由がある筈だ。今日まで殆ど話したことが無かった筈の陰キャ男子のママになる為だなんて幾ら何でも冗談が過ぎる。
『学校では私の事をママだと呼んでいいからね』――なんて、何故か俺達の家の事情を知りながら、どこか挑戦的に言ったあの言葉も単なる揶揄いの筈だ。
……と思考をぐるぐるしている事さえ、何か楽しんでいる福路さんのアヒルみたいな唇。俺、この人の玩具にされてる!?
「でもやっぱりマネージャーになってよかったです」
「まあ、あのスポ根の光景が楽しめたなら何よりだ」
「ママは子供が頑張っている姿を見れて嬉しいですよ?」
そう言いながら座席に座っていた福路さんは白い太股を強調した。
「沢山褒めてあげるから、おいで?」
「…………………………………………」
理性は『なんで電車でそんなプレイを?』と冷静に諭す。
情緒は『おぎゃああああああああああ』と言ってる。
やばい。この人、一挙手一投足に天性のバブみが備わってやがる。
「……いや冷静に交通公共機関でそんな事したらアカンだろう!?」
「周りを見てください。誰も居ませんよ」
「えっ」
「さあ、いい子ですから早く~」
同列車どころか、隣の列車にさえ誰もいない。生憎とこの電車は古いために監視カメラも存在しない。おまけに車掌は遥か彼方。熱愛カップルよりも更にヤバイ体勢になろうと指摘する人間が誰もいないのだ。
その事実が俺を狂わせた。
……気付けば俺も座席に座り、福路さんの膝枕に納まってしまった。
「…………………………」
いや何納まってんだあああああああああ!?
でも真理よりも弾力と包容力のある太股に、カーディガンの独特の感触。そして顔を反対方向に向けると彼女の下腹部がすぐそこにあって、天井を見ようとすると何カップあるか判定さえできない母性の塊で視界が覆われる。
俺はされるがままだった。福路さんの全てを味わっていた。このまま腹部に埋まりたい。そのまま子宮に沈んでまた生まれたい。
疲れのせいだろうか。もう理性が息していない。欲望のままに、ママの枕でウトウトし始める。
「へへ、いい子ですね。いい子いい子!」
◇◆
「やってしまった……!!!」
俺は正気に戻った!
気候の悪戯で六月にはとても寒い涼風が俺の目を覚ます。そして『お前は同級生をママにして膝枕していたんだ』と理性の説教を受ける。罪悪感で福路さんを見る事が出来ない。
「福路さん、その……」
どうやら福路さんもかなり無理していたようで、頬を赤らめていた。なんだ、そんな顔も出来るんじゃねえか。
「これはママと隆司くんの秘密ですよ」
「なあ、その、なんで俺にそこまで……」
「おや。隆司くんは電車乗り継ぎですよね?」
福路さんが俺の通学経路を何故知っているのかはさておいて、どうやら福路さんはこの駅で降りるらしい。改札に向かっていった。
俺も一緒に改札から降りる。
「えっ? 駄目ですよ隆司くん、ここは私の駅ですよ? もしかして迷子になったんですか?」
「いや、夜遅いんだから女の子一人で行かせる訳にはいかないだろう」
「……」
「ごめん。今のなし」
真理へのクセでえらい事を言ってしまった。よくよく考えたら下心があると思われても仕方ないや。何せ福路さんは学校一の美少女だし、同じように一緒に帰りたいと考える男子も多い事だろう。『ワンチャン』とか企んでそうな陽キャも多そうだし。
大体膝枕している時点で下心丸出しと馬鹿にされてそうだけどな。
だが福路さんは思いのほか、嬉しそうに微笑を浮かべるのだった。
「いい子ですねぇ、ほんとうに。偶にはママも甘えちゃおうかな」
福路さんの家は駅から滅茶苦茶近かった。というか昔は辺り一帯を取り仕切っていた豪農だったのは間違いないようで、築1000年と言っても信じてしまうような荘厳で巨大な屋敷に辿り着いてしまった。
流石に上がっていくわけにもいかないし、そろそろ真理が心配するのでいい加減帰る事した。
「隆司くん。私、テニス部のマネージャーになれて本当に良かったですよ。明日からもよろしくお願いします」
「ああ。よろしく」
結局なんでテニス部のマネージャーになったのかは分からないし、何故俺にママプレイをそれも学校でするのかは理解できなかったが、それでもマネージャーとしての働きは確かだ。時には三間森先生さえ敵に回す頼もしさは間違いなく――聖母だった。
そんな聖母こと福路さんは、最後に物憂げな表情でこんな事を言ってきた。
「隆司くん。無理しないようにね。君はきっと、他人の為なら簡単に怪我しちゃうような子ですからね……だから私がママとしてちゃんと見守っていますからね」
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学校中の美少女が俺のママになってくるんだが かずなし のなめ@「AI転生」2巻発売中 @nonumbernoname0
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