私の顔をした誰か

夏宵 澪  @凛

『ねえ、君はどこまで本当?』

朝起きたら、

机の上に知らない“私”のメモがあった。


「今日の私は、昨日より少し壊れています」


字は私のもの。

でも心当たりがない。

そんな一行だった。


学校へ向かう道、

アスファルトの影が

何度も私に追い越されていく。

――おかしい。

影はいつも後ろにいるはずなのに。


友達が笑って言う。

「ねえ、さっきの君、なんで泣いてたの?」


泣いてない。

泣いた覚えなんてない。

でも彼女のスマホには

ぐしゃぐしゃの私が映っていた。

……誰?


夜、帰宅すると

鏡の中の“私”が

ほんの少しだけ

遅れて笑った。

まるで、

本物がどちらか選んでいるみたいに。


ねえ。

私って、そんなに増えたっけ。


知らぬ間に置き忘れた昨日が

誰かの姿を借りて歩き出す。

そんな予感が

ずっと消えない。


だから明日、

また机の上にメモがあったら

こう書いておこう。


「今日の私は、

 まだ全部が本当の私です。

 追いついてこれるなら、来て。」

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