ジェンダーチョイス-ドミノの真実-

白美希結

ドミノの真実


 ※この物語には「ジェンダーチョイス」で語られなかった真実が含まれています。

 優しい結末のままでいたい方は、この先を読まずに閉じてください。

 ここから先は、ドミノ倒れが起きた理由が明かされます。


 ______________________________

 

 ───だって、欲しかったんだもん。


 ふわふわした白いお部屋の中で、宣言する日を待ってるの。

「右です」

 何度も練習してる。きっと、周りのみんなはプカプカしてるだけ。

 でも、『わたし』は違う。

 宿り先が決まってから選択するなんて考えられない。

 光の世界に誕生したら、白いお部屋のことなんて忘れちゃうんだから今のうちに決めとかなきゃね。

 でも、もう少しだけこのお部屋で過ごさなくちゃいけないんだ。温かいお部屋が元の形に戻るまで時間がかかるみたいなの。わたしが絶対に欲しいものが手に入るためだから仕方ないよね。

 

 あるとき練習中にね、プカプカしてる子に話しかけてみたの。

「すべり台の色決めた?」

「かんがえたことない」

「……」

 無意味だよね。みんな、わたしとは違うんだもん。だから列に並ぶプカプカをじっと眺めてみたの。

「右です」

「左です」

 止まることなく、そんな声が聞こえるの。それでね、シューって光の世界にいったプカプカたちはキラキラした場所に辿りつくのか不安になってきちゃって。

「絶対にいや」

 思わず言っちゃった。光の世界が『いいところ』とは限らないでしょ。だから思いついちゃったの。

 『いいところ』であるためには『左の子』が必要だって。同じはダメ。


 ときどきね、列から少しだけはみ出てるプカプカがいるの。きっと、宣言することを決めてるのね。わたしみたいな子もいるみたい。

 だから、右が多いときを狙ったの。このときはプカプカしていることに『ありがとう』って言ったわ。

 ポワン、ポワンと動いてシャボン玉が弾けるように列を押したの。

 

 『ポワポワポワ』


 大成功。

『右です』と宣言したあと、あの子が左にスルスルっとすべっていったんだよ。この時から、眺めることに意味をもったの。

 覚えてないけどポワン、ポワンとたくさん動いたなぁ。やっぱり一回じゃ安心できなくて。

 光の世界へいったら、みんな忘れちゃうから大丈夫なんだ。

「ふふっ」

 すごくいいこと思いついたでしょ。


 あ、ポワポワの色がムラサキになったよ。

 列に並べるお知らせなの。ついに本番。

「やっと、きた」

 あとは練習通りにするだけだね。

 最後にもう一度だけ、言っておこうかな。


 ────「右です」

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ジェンダーチョイス-ドミノの真実- 白美希結 @hakubikiyuu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ