夢
沙華やや子
夢
玲衣子ちゃんにパパはいない。ママは夜お仕事へ行くので、玲衣子ちゃんはおばあちゃんにお風呂に入れてもらい、眠たくなるまでおばあちゃんのおそばにいます。
おばあちゃんがずっとテレビで観ているチャンバラはつまんない。
あるとき玲衣子ちゃんは、おばあちゃんがいないところでママに言いました。
「ねぇ、ママ……おばあちゃんがみるテレビおもしろくないよ」
優しくて、玲衣子ちゃんのことが大好きなママは悩みました。
そうして良いことを思いつきました!
「そっか、わかった。玲衣子ちゃん? ママがね、図書館で絵本を借りてきてあげます」
「ご本ね? ママ?」
「そうよ、玲衣子ちゃん。おばちゃんのおそばでご本をみれるかしら?」
「はーい♪」
お話を読むのと、絵をみるのが大好きな玲衣子ちゃん。ふたつ返事です。
*
夕方になりました。ママがお仕事に出掛けます。そのとき玲衣子ちゃんはいつもさみしい気持ちになります。でも、家族のためにママががんばっていることを玲衣子ちゃんはよく知っています。
「ママいってらっしゃい。お仕事がんばってね!」
「はい。玲衣子ちゃん、ご本ね、5冊もあるわよ!……じゃあ、お母さん、いってきます。玲衣子をお願いしますね」
「ああ、だいじょうぶだよ。気をつけて行っておいで」
おばあちゃんと玲衣子ちゃんは、おしゃれをしたママをお見送りしました。
「玲衣子、おばあちゃんね、みたいテレビがあるの! お風呂に先に入っちゃいましょう」
(おばあちゃんはなんだか子どもみたいでかわいいな~)と玲衣子ちゃんは思います。
*
おばあちゃんとお風呂でサッパリした玲衣子ちゃん。パジャマを着た玲衣子ちゃんがおばあちゃんのお部屋で絵本を抱きしめています。
玲衣子ちゃんは、文字が大好きなのでむずかしい漢字以外はぜんぶ読めちゃいます。簡単な漢字なら読めます。
ママが図書館から借りてきてくれたご本は『ねこのくつした』『太陽が泣いた日』『わたがし遊園地』『時計がしゃべった』『おしゃれなリボン』。
テレビの中では刀を振り回す勇ましい顔のちょんまげ男! おお、こわい。
玲衣子ちゃんはおばあちゃんのおそばで、おひざに本をのせ、ドキドキしながらページをめくり始めました。まずは『わたがし遊園地』。
甘い香りが漂う夢のような遊園地のお話です。(ベタベタしそうだなー)だなんてふと思うおませな玲衣子ちゃん。
でも、色彩豊かなメリーゴーランドの絵にうっとり。
(わぁ~、あたし、ここに行ってみたいな!)どんどんページをめくり、しあわせな気持ちで本を閉じた玲衣子ちゃん。
お次に手に取ったのは『太陽が泣いた日』。
あ、おばあちゃんの好きなテレビ番組が終わったようです。
おばあちゃんが『太陽が泣いた日』のお話をのぞき込んでいます。ページをめくっているのは玲衣子ちゃんです。ところどころおばあちゃんは「うん、うん」と真面目なお顔でうなずきました。
「これは『ちきゅうおんだんか』のことを言っている」と、最後のページまで行ったとき、おばあちゃんが玲衣子ちゃんに教えてくれました。
お話の中で『主人公の太陽君が、自分の体が熱すぎて涙をこぼす』という悲しいシーンがあるのです。
『ちきゅうおんだんか』の言葉の意味が、玲衣子ちゃんにはよくわからないけど、おばあちゃんに尋ねると話が長くなるのでよしました。それより次の本が読みたい。
最後の『ねこのくつした』を玲衣子ちゃんは一番気に入りました。
白い毛色ににくつ下を履いているように黒い毛が生えているにゃんこのお話です。
そのにゃんこはとても自分の体の柄が自慢なのです。
夜も更け、お目めのしょぼしょぼしてきた玲衣子ちゃん。おばあちゃんがお布団を敷いてくれました。
あっという間に夢の世界の住人となった玲衣子ちゃん。
(あ! あたしとママがいる!)夢に登場してきたのは玲衣子ちゃんとママです。
ママのブラウスのお胸のポッケから、虹色の平たく美しいひもがスルスルと出てきました。それは少しはなれた場所にいる玲衣子ちゃんのシャツのお胸のポッケまで届き、大きくリボン結びされました。
(あ! 絵本で見た『おしゃれなリボン』といっしょだ!)なんだかハートほんわかとする玲衣子ちゃん。
朝、目が覚めると玲衣子ちゃんの髪の毛を撫でるようなかっこうで、玲衣子ちゃんに寄り添い熟睡していたママ。
絵本ってなんだかふしぎ。ふしぎでおもしろい!
*
あれから40年の月日が流れました。
時代劇が日課だったおばちゃんは年を取り、去年天国へ行きました。65才になったママはお仕事をやめ、今はのんびり暮らしています。
そして玲衣子ちゃんは……なんと、絵本作家になったのですよ!
あれからも絵本の魔法が、勇気と元気を玲衣子ちゃんに与え続けました。
素敵ですね!
夢 沙華やや子 @shaka_yayako
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