ウメボシ3

夢月みつき

本文「ウメボシ3」

 本作のみでも読めますが

 下記にリンクした前作、「ウメボシ2」を読んだ後の方がより楽しめます。

 ジャンルはホラーではなく☆コメディ・ギャグです★

 前作

 1.ウメボシ

 https://kakuyomu.jp/works/16818792435768848233


 2.ウメボシ2

 https://kakuyomu.jp/works/822139836367252150






 前回、正義のじいさまとばあさまに果肉をむしられ、おかずにされてしまったウメボシだったが、無事、むしられた所は果肉が生えて元通りになった。



 今度は、じいさまとばあさまに見つからないようにこっそり、女性を襲うことにした。


 街灯の下で虎視眈々こしたんたんと待ち続けるウメボシ、すると道の向こうからオレンジ色のスーツを着た仕事帰りの女性が歩いて来た。


 息を殺して待つウメボシ、その女性がウメボシの待つ街灯の下に差し掛かった、その時、「ウメ――!」ウメボシは嬉々ききとして襲い掛かった。




「ギャー!」


 しかし、その女性の声がとんでもなく低くて野太い。

 これには一瞬、ウメボシの方が驚かされた。

 街灯の明かりの下、ウメボシが女性の姿をよくよく確認してみると……



「なぁに、見てんだ?おんどりゃあ!?」


 それは何と、ごつくて毛深くマッスルな心は乙女さんだった!



「いてこますぞ、ワレえ! 伸してウメボシパックにしてやるわぁああああッッ!」


 マッスルな乙女さんはギャランドゥをわさわさ揺らしながら、鬼の形相で両手を振り上げた。



「ウッ、ウメャギョワー〇△□〇~~(大泣き)」


 ウメボシは声にならない叫び声を上げてその場から逃げようとした。


 むんず!


 ウメボシは、心は乙女さんに掴まれて身動きが取れなくなった。


「ウッ、ウメぇええええええええ!!」



 泣き叫び発狂するウメボシ、前回のじいさまとばあさまといい、今回の心は乙女さんといい、なんて運がないんだ!




 世界の中心で全ウメボシが泣いた! 絶体絶命だと思った、その時、


「わしらのウメちゃんになにすんじゃ~」


「ウメボシ様はわしらのモンじゃ~」


 こともあろうか、じいさまとばあさまにまで遭遇してしまった。

 ウメボシピンチ!



「弱い者いじめして、なにをやってんじゃ~!タケシ――」


「ウメ?」


「うわぁああ!じいちゃん、ばあちゃんカンベンして~~!!」


 じいさまとばあさまは、心は乙女の孫のタケシを追い払った。

 あのじいさまとばあさまが助けてくれた、ウメボシは感動して目から梅エキスが溢れた。



「あっ、勿体ない」



 ばあさまが紙コップを取り出し溢れた梅エキスを受け止める。

 ウメボシとじいさまとばあさまは並んでベンチに座って話していた。



「ウメちゃん、食わねえから何でこんなことしているのか、聴かしてや~」


「ウ、ウメ……」


 ウメボシはうなずくと、話せないのでメモにペンで経緯いきさつを書いてみた。



 過去に自分を漬けて大切にしてくれていた女性が、ある日、病気で突然亡くなってしまった、その日にカビが生えないはずの梅干しにカビが生えた。


 その日から梅干しはウメボシと言う怪異かいいに生まれ変わり、女性を襲うようになった。


「寂しかったんだ」ウメボシはポツリとメモに一言書くと涙を流した。


「ウメちゃん……なんてことなんじゃ」




 じいさまとばあさまは目を泣き腫らすまで泣いた。

 ウメボシも一緒に。


 ひとしきり泣いたウメボシは、じいさまとばあさまにさそわれた。


「ウメちゃん、ウチの子になるかい? こんなことしてないでウチに来ておくれ」


「ウッ、ウメ……」



 こくりとウメボシはうなずいた。

 ウメボシはじいさまとばあさまと月明りの下、一緒に家に帰って行った。



 おわり



 最後までお読みいただきありがとうございました。



 過去作はこちらに入ります。

「夢の月コメディ劇場短編集」

 https://kakuyomu.jp/works/16818093085174942474

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