最終話 本当の騎士
私は、初恋の幼馴染アーサーと結婚しました。
私にとっては二度目の結婚となりますが、本当に愛する人と結婚できて幸せです。
契約でもお飾りでもない、本当の本物の、幸せな結婚生活が始まりました。
「セルマに暴言を吐いたことは許せないけれど……」
私の夫となったアーサーは、ライナス様について言いました。
「こうして僕らが無事に結婚できたのも、ライナス様のおかげだね。僕は領地のことでいっぱいいっぱいで、どのみち二年は結婚できなかったよ」
「そうね。ライナス様に酷いことを言われたときは凄く腹が立ったけれど……。資金援助もしてくれて、白い結婚の約束もちゃんと守ってくれたわ」
「やっぱり育ちが良い人なんだろうなあ。一緒に暮らしてるのに白い結婚の約束を守ってくれる男なんて……。なかなかいないと思うよ。正式な妻に手を出しても罪じゃないんだから……。ライナス様は根はすごく良い人だと思う」
「そうなのかしら」
「そうだよ。資金援助してくれて、白い結婚を貫いてセルマを返してくれて、大変な篤志家だよ。そんな誠実な男はなかなかいない。これはもう美談だ」
「じゃあ、そういう美談にしてしまいましょうか? ライナス様のために」
「何か考えがあるの?」
私はライナス様にお手紙を書きました。
私とアーサーの初恋のために、ライナス様が身を引いてくれたことへの感謝と。
この美談を社交界で語るという予告を。
そして実行しました。
やがて。
私とアーサーの初恋を実らせるために、氷の騎士ライナスは白い結婚を貫き、そして身を引いた、という美談が社交界で囁かれることとなりました。
乙女の初恋を守るために潔く身を引く、これぞまさに騎士道だ、と、ライナス様の『氷の騎士』の二つ名は高まりました。
そしてライナス様の人気が社交界で急上昇。
クレイトン侯爵夫妻は、私とライナス様が白い結婚だったことを知り残念がりましたが、「そういうことだったのか」とライナス様の男気を褒め称えました。
夜会やサロンで、私をいつも放置していたライナス様の姿を知っていた者たちも「そういうことだったのか」と納得して、ライナス様を褒め称えたそうです。
ライナス様の再婚相手はまだ決まらないようですが。
美談により評判が高まったため、ライナス様は騎士爵に叙勲されることが決まりました。
王妃様がライナス様の美談に感動なさり、王室騎士団にライナス様を推薦してくださったとのことです。
イメージからのあだ名ではなく、ライナス様は本当の騎士になられるのです。
アーサーと結婚して幸せになった私は、今では……。
ライナス様の幸せを心よりお祈りしております。
――完――
氷の騎士と契約結婚したのですが、愛することはないと言われたので契約通り離縁します! 柚屋志宇 @yuzuyashiu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます