夏秋冬春

吉本 冬呉

夏秋冬春

しわになったタオル』


五月の日差しが土を焼く


ひらめかせて走る貴方


暑さも忘れて見つめてた


差し出せなかったタオルには


想いを込めていたはずなのに


見つけてしまった 貴方とあの


その手に見えた 真白いタオル



『カラスはわらう』


九月の夕焼けが私を刺し殺す


走る貴方と笑ったあの娘


振り返らないと決めたのに


黒いカラスが後ろで鳴いた


夕焼けに映る 黒い影


耳を塞いで走っても


カラスはわらう 私を殺す



『痛み、あるいは』


十二月の曇天どんてんが冷たく突き放す


あのと二人 笑って歩く貴方


いつまで見てるとカラスがわら


五月蝿うるさい黙れと つよがり返して


ため息一つ 歩き出す


ふと声を掛けられ 立ち止まり


振り返れば


赤い顔した 君がいた


カラスが笑って 始まった



『春 ~ゆうき~』


三月の陽射ひざしを浴びて思い出す


あの日の君の 赤ら顔


私を前に進めてくれた


私と一緒に 歩いてくれた


貴方とあの娘は カラスと共に


私と君は この子と共に


思い出すのは あの冬の日の


小さなゆうき

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夏秋冬春 吉本 冬呉 @Tougo_Yoshimoto

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