表札

金時まめ

〜表札〜



心に言い聞かせた


  もう連絡はしない 返事もしない

  会いたいなんて もってのほかだ



ぼくは“正しさ”を大切にした 

ただ守りたかっただけだった


でも その見返りに

心には空洞だけが残った


  いっそ

  泣いて責めてくれればよかったのに


  想定していた罰さえも

  きみは かかえさせてはくれなかった

  それがあれば どれだけ楽だったろう



何度も「あの言葉は正しかったんだ」と自分に言い聞かせた

何度も「あの方法しかなかったのか」と自分を追求した



このまま

この想いも 美しい日々も 本当の自分も 


朝露のように
 誰にも知られずに 

消えてしまうのか


これが

きみを守るために

ぼく自身が選んだ 孤独の道




それでも 夢も見るんだ


もしかしたら――

きみはまだぼくを信じてくれていて

いつの日か

きみがぼくを捜しに来てくれるかもしれないって


そんなことはないのに

そんなことはないはずなのに――




だからせめて

いつか そんな奇跡が起きてはくれまいか


表札だけは いまも静かに残して 

出口の見えない トンネルの中で

きみをかかえたまま 今日を生きている




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