第3話 MBTCA:里咲条約交渉官の記録
*****
——神秘存在条約調整機構——
超事調整委員会 承認済
場所:岩手県盛岡市██
担当者:
対象存在:██(神的存在)
——標準的神的存在交渉手順に従って交渉は行われました。
※注:交渉記録に関して、全て現代日本語に翻訳されています。原文は
〈音声記録の書き起こし、開始〉
里咲:お初にお目にかかります。日本政府代表、里咲と申します。
██:貴殿は害をなす者か?
里咲:害をなす者とは、どのような定義ですか?
██:我が庇護を受ける者たちに害を与えうる存在か?
里咲:いいえ。私は害から守ることを約束する者です。
██:約束など不用。我は待った。しかし我が庇護を受ける者たちに対する害はなくなっていない。
里咲:待った……とは?
██:我が願いに応じ(顕現/実体化)したときに見た景色は忘れぬ。故に、永続的に我が庇護を受ける者たちは、それを享受し続ける。
里咲:私は貴方様の計らいに感謝します。しかし、貴方のような存在は人の営みに介入すべきではないと、進言いたします。
██:なぜ?
里咲:いつか、歪みが生じます。人と神。それは別の生き物です。同居はできません。
██:……。
里咲:そして、貴方に失望はさせません。私たちは改善する用意があります。
██:我は待った。しかし改善しなかった。
里咲:確かにそうです。しかし、もう一度、私たちを信じてください。必ず改善させます。
██:……。そなたを信じる時間が必要だ。日を改められよ。
里咲:感謝します。そのときは条約を結び確約します。
〈書き起こし終了〉
終了報告:里咲条約交渉官は手順通りの対応を行った。次回交渉までに、盛岡市において児童の失踪に関与した全ての事象について再調査と資料の整理が必要です。
条約交渉官:里咲 印
*****
「超常教育課 二係所属の
岩手県盛岡市。市役所内に設けられた対策室にて手渡した資料と共に一言添える。
私は疲れた。この疲れが次回までに回復していることを祈る。神的存在との交渉は何度やっても慣れない。
「これから本事件を『盛岡市神隠し現象事件』と定義し対応します。皆様のご尽力、よろしくお願いします」
私には休息が必要だ。
盛岡市神隠し現象事件 壊れたガラスペン @deck-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます