雪の中で

@1pearl1

プロローグ

私は見知らぬこの土地で静かに死のうと思う。私は札幌から少し離れた場所にある親友の家からそう遠くない公園のベンチに座っていた。1月の北海道は雪が積もり、気温は氷点下になっていた。さすが北海道。寒さの次元が違う。息を吸い込むだけで肺の中に冷たい空気が充満する。すぐに鼻や頬は赤く染まり、まつ毛は凍る。手袋をしていても指先は氷のように冷たく、感覚も消えつつあった。こんな感じでどんどん色々なところの感覚がなくなって死ぬのだろうか。


北海道には高校時代の親友の家に遊びに来ていた。大学受験の時、十数年と過した土地からだいぶ離れた土地である北海道の大学に進学すると聞いた時は驚いたものだ。私は地元の大学に進むことにしていたため、北海道なんて遠すぎて全然会えなくなると言うのに、それでもいいのかなんて、少し重いことを考えた私をよそに親友は北海道の大学に無事に合格した。そのなかなか会うことのできない親友と遊ぶ貴重な機会に私は自殺を持ち込んだ。親友とめいいっぱい遊んで心から笑った後に死ねるなら最高の最後な気がした。親友を利用して死ぬことに申し訳なさも感じたが、地元には凍死できるような気温には到底ならないため、この機会を利用しようと考えたのだ。親友は私がいなくなったら悲しんでくれるだろうか。もしかしたら責任を感じてしまうかもしれない。そうなったら嫌だなと思いつつ、親友の家に帰るという考えは頭にはなかった。


色々な死に方を考えたが、血が出るのも内蔵が飛び出すのも嫌だと思い、最終的に行き着いたのが凍死だった。死に際に自分の姿を気にするなんて、とんだプライドを持っているなと思いつつ、1番綺麗に死ぬ事ができる凍死に憧れた。どこかの誰かが、死んだ姿を気にする程の余裕があるのならまだ死ぬときではないと言っていたような気もするが、最後ぐらい綺麗にいたいと思う。最後だからこそ、姿を気にしてもいいではないか。それに凍死だと一人で死ぬ事ができる。誰かを巻き込むことも、交通機関を止めて迷惑をかけることもない。


呼吸をするために白い息が出る。冬の夜の綺麗な星空を眺めながら、私は感傷にふけっていた。

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