スコープハイスペック
止ヒ糸ケン(むらさきけん)
第1話 狙撃舞台は整った
ドアを開け、すぐに靴を脱ぎ捨て真っ先に手に取るはフルダイブデバイス。
「今日はアレが始まるんだよな〜」
ユートワールド。ゲーム、マジックブレードに追加された超大規模マップ。今までは広さのある箱庭空間だったが、このマップでは何もかもが膨大らしい。噂では全てのマップが内蔵されてるとか。
「どんなテイストなんだろうな。高い所あるといいが…」スッ…
セット完了。ゲームマジックブレード、起動。
思考が線となり光となるこの感覚、眼前に広がるデータの粒子を浴びながらゲームに異動する。
well come to the magic blade.
シグマがログインしました。
「さてと、マップは…あったあった。あ、その前に…」
おろしていたフードを被り、マウスマスクを装着。
「これでよし。アバターの顔まんまなのやめればよかった…とにかく入ろう。」
ピコン
吹く風、明るい空、いつもと違うとすれば、妙に暖かいこと程度。
「あいつも来てるかな。プレイヤー数が…え嘘ぉ。三万人いるの?なんか増えてる。」
歩みを進めながら物珍しいものを探す。
パラメータが一向に表示されず、情報が分からないため村を優先して探した。
きゃーー!
「なんだ?」
ちょうどそこにあった倒木の陰に隠れてスコープを覗き見る。
三人、うち1人は襲われてるな。あの格好は狩人と武闘家の役職…狩人からだな
ドン!
「な!?どこだ!」
武闘家は女性の腕を掴み盾にした。
「まさか狙撃のシグマか!?こんな早くに来てたのか!」
ん?死体が消えてない。アップデート入ったのか?
ドン!
「あの人の格好見たことないな。NPCだな。」
「……!あ…あなたは…」
「アイテム回収しよっと〜…あんまいいのないな。「あの!」
話しかけられた。今回相当気合い入れたマップだな。
「シグマさん…おひさしぶりです。」
「どう…え?今なんと?」
「またそのフード…ですか。」
訳がわからない。プレイヤーか?でも知らないネームタグだ。シャルマ…やっぱり知らない。
「村ってどこにありますか」
「村でしたら着いてきてください。シグマさん」
NPCだな…まだ一時間程しか経ってない。
またそのフードですか
この言い方はプレイヤーじゃなきゃおかしい。
「シャルマさん。役職はなんですか?その格好はあまり見ないもので。」
「私ですか?普段は村で看板娘として働いています。」
???
落ち着こう一旦深呼吸…すー…はー……ちょっと暑いな。
「着きました。少し大きい村でしょ?」
「はい…あの、なんで俺のことを…」
「だって…よく見てましたもの。あなたのことをずっとずっと。」
「おや、シャルマよ、もしかしてこの人…」
「おじさん、そうそうこの人よ。」
「おーやはりか、あんたの持ってる銃でわかったよ。」
怖い…なんで?NPCだよね?おかしいってなんで知ってるの?
「あ、あはは…ちょっと暑いなーそれに喉が渇いたなー…」
「でしたらお家に。」
レンガ作りの壁、炭がほんのり香る鍛冶屋。ざらざらとした木目の椅子と机。匂いってアップデートで分かる様にしたのかな…
「確かユートワールドの目標はラスボスの発見と討伐…でもマップが配布されてない…」
「シグマさん?どうされました?」
「ああいえなんでも…マップ見せてもらっていいですか?」
「ここに地図はあったかねぇ…んー…あーあったよ。」
机に置かれた古い髪を覗き込むと、意外にも狭い地図だった。
「ここが私たちの場所で、北側に進むと恐れられた龍と会えますよ。」
「え、ワールド狭いな…」
「どうしたのだシグマ君。地図なんだから書くのにも限界があるのさ。」
無駄にリアルだな…てか腹減ってきたな。飯食べてから入ればよかったなぁ…
「シグマさん。ちょっと着いてきてください。」
そう呼ばれて外に出てから気づいた。まだ2人の死体が残っている。
しばらく歩いた先には石造りの塔が立っていた。
「ちょうどここの家は空き家になりまして、よかったらここで住んではいかがでしょうか?」
「いくらですか?」
「助けてもらったお礼です。」
塔の最上階のベッドに一旦くつろぐ。
プレイヤーの情報がイベントとして認識されてる?いやでもそれは別マップでも稀に起こってたし。いやそれよりも俺のことを知ってたことだ。女性NPCはフードのことを最初から知ってる口ぶりだった。
「気味が悪い…ログアウトしよ…」
ログアウト条件
アバターを睡眠体制に移行してください
は?なんだこのシステム。……こうかな。
アンロック。ログアウト開始。
シグマがログアウトしました。
スコープハイスペック 止ヒ糸ケン(むらさきけん) @HELS
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