ドジな見習い魔法使いの私、気づいたら敵国の天才魔術師に恋してました!?

月野アオイ

第1章 : 森で出会った、天才魔術師

――光が弾けた。


「きゃあああっ!!」


私の叫びと同時に、杖の先から爆発的な光が広がる。魔力制御の授業でまたやらかした、

そう気づいた瞬間、足元の魔法陣が暴走して

――視界が白く染まった。


次に目を開けたとき、私は見知らぬ森の中にいた。空気は冷たく澄み、鳥の声ひとつしない。

木々の影が濃く伸びて、どこか異国の匂いがする。


「……ここ、どこ……?」


制服の裾が土で汚れ、杖も見当たらない。

焦りながら辺りを見回したそのとき――

低く、冷ややかな声が背後から響いた。


「ここは、立ち入り禁止区域だ。貴様、どこの者だ?」


その声に凍りついて振り向く。

黒いマントをまとった青年が立っていた。

銀の髪が陽に光り、金の瞳が獲物を捉えるように細められている。


「え、あの、ご、ごめんなさい! 

私、道に迷って――」


「迷って来られる場所ではない。愚か者め」


青年は杖を軽く振った。空気がピリリと震え、

木の葉がざわめく。


(ま、まずい……これって、

敵国ノルディアの魔力……!)


喉がひりつく。学園で散々教わった――

“敵国との接触は禁忌”だと。

私は慌てて後ずさり、足をもつれさせて転んだ。


「いっ……!」


土の上に膝をついた瞬間、涙がにじむ。

青年は小さくため息をつき、ゆっくりと近づいてきた。


「怪我をしては、動くこともできまい」


その指先から淡い光が流れ出す。

私の足に触れた瞬間、温もりが伝わり、

痛みがすっと消えた。


「……治してくれるの?」


「勘違いするな。貴様がここで死なれては、処理が厄介だ」


そう言いながらも、その手つきは驚くほど優しかった。冷たいはずの光が、どこか優しくて。

私は、彼の横顔を見上げることしかできなかった。


「帰れ。ここは、貴様のような子供が来る場所ではない」


そう言って背を向ける。

マントの裾が風に揺れ、私の指先をかすめた。


「ま、待って! あなたの名前は――」


「名を知る必要はない」


振り返らず、彼は闇の奥に消えていった。

その背中が見えなくなっても、鼓動は止まらなかった。


この出会いが、まさかあんな事件につながるなんて――

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ドジな見習い魔法使いの私、気づいたら敵国の天才魔術師に恋してました!? 月野アオイ @tsukino_aoi

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