親父
イロイロアッテナ
親父
本作は、ショート・ショート・ガーデンのクラフトビールコンテスト第3弾(概要は下記の通り)に投稿した作品です。
記
文字数:上限400字
テーマ:「グビグビ」「ゴクゴク」「チビチビ」など、ビールにまつわる擬音語です。
解釈は自由、オリジナルの擬音語でも構いません。※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
俺は親父が嫌いだった。
小さな鉄工所を切り盛りして借金まみれだった親父が嫌いだった。
旋盤から飛び散る金属の粉が爪の間に入り、常に真っ黒だった親父が嫌いだった。
その金物臭い手で、俺を子供扱いして、頭を撫でる親父が嫌いだった。
仕事終わりに背中を丸めてビールをチビチビ飲んでいる親父が嫌いだった。
頭がよかった俺は、この状況から抜け出してやる、いつもそう思っていた。
俺は有名大学に受かったが金なんてねぇから、特待生で授業料を免除してもらった。
バイトでも何でもして食いつないでやる。
そんな出発の朝。
黙って家を出ようとしたが、工場の入り口に親父が立っていた。
「これ、少ねぇけど、チビチビ貯めたんだ。使ってくれ。」
親父がよこした通帳には、俺が4年間バイトなしで暮らせるだけの額が入っていた。
「そんな、ずるいじゃねぇか親父。」
立ち尽くす俺に親父は
「泣くなよ、チビ。頑張れよ。」
そう言って、俺の頭を何度も撫でた。
親父 イロイロアッテナ @IROIROATTENA
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