残月

一閃

第1話

朝 目を覚まして窓を開けた

秋の少し冷たい風が吹き

澄みきった薄水色の空が広がっていた

そして

昨夜の十六夜の月が真白くぽっかりと浮かんでいた


満ち時を過ぎ 夜の闇ではなく薄水色に浮かぶ残月は

時も場所も形も色も

いつもの 月とは違う印象だ

『時も場所も姿形も関係ないよ』と言ってるかのようで

どこかいさぎよくも見えて魅せられた


『そっか…他人ひとの言うことは気にしてしまうけど…関係ないよね』

『らしければいいんだよ』

『らしい?』

『自分らしいってこと』

『自分らしいか…それが難しいんだけどね』と笑ってみせた


あわただしく部屋を出て空を見上げると

当たり前に 残月は居なかった


『当たり前に…自分らしく 潔くか…』

『そんな自分になりたけどね…』

少し皮肉っぽく言ってみたけど

そうでありたいとは いつもどこかで思っているのも

真実ホントなんだよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

残月 一閃 @tdngai1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ