時間が過ぎゆく。
竹内昴
第1話 時間が過ぎゆく。
それなのに、どうしようもなく、もどかしい。
やりたいことに、心も体も追いつかないまま、
時間だけが前へ歩いていく。
もし、星々が一斉に墜落し、
世界の形がひっくり返るような終末が訪れたら、
僕はそこで「助かった」と思うだろうか。
──もう時間に追われなくていい、と。
嫌いなことに費やした時間は、
苦味だけが舌の上に残る。
だが、「キツイ・キタナイ・カッコワルイ」の中でこそ、
人は自分を試され、磨かれていくのかもしれない。
時間の使い方ひとつで、
その姿の見え方は、たしかに変わる。
人は誰しも、悩みの深みに沈んだ経験を持つ。
そこで得た自己の扱い方は、
他人に説明できない。
遠い世界の誰にも伝わらないとしても、
同じ時間を生きているという、それだけで、
僕らはどこかでつながっている。
思うようにいかない時間の中でも、
「何とかしてみよう」と手を伸ばすこと。
その、たった一歩が大切だ。
趣味に没頭すれば、一時間が一瞬になることもある。
睡眠に時間を割くことが、贅沢にも義務にもなる。
時間の感覚は、人それぞれで、どれも正しい。
「今から、どれだけできるだろう?」
その問いこそが、生きるという始まりだ。
段取りを立てて、呼吸を整え、
本題へと入る、その心の準備。
人は、時間に縛られながら、同時に、時間を作っている。
気ままに過ぎゆく時間が、
良いとも悪いとも言い切れないのは、
時間そのものに、明確な形がないからだろう。
時間は曖昧だ。
けれど曖昧なものほど、
僕たちを深く動かしているのかもしれない。
完
時間が過ぎゆく。 竹内昴 @tomo-korn
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