やまでらぐみ

ようすけ

第1話



 ボールが転がっている。わたしは最初、それを人間の頭だとは思わずに、普通にビーチとかで皆が遊んでいる空気ボールなのだと思った。そんなに陽気な性格でもないくせに、その時ばかりは気分が良くって勢いをつけて蹴っ飛ばしてしまった。

「うう……」とか「おお……」などとギャラリーたちの声が聞こえた。 

 彼らがこの惨劇の仕掛人だった。

 経緯はこうだった。まずは彼らの仲間である山寺という男が登場する。この山寺という男は生粋の陽気な人物で、その仲間たちである山寺組の男たちはやや内気な性格で占められていた。面白かったのはその仲間たちである山寺組の男たちがやや内気であるというのに、本人たちは陽気な山寺と一緒に居過ぎて、自分たちが生まれつきやや内気であるという事を忘れて、無理に陽気な人物を装っていることだった。

 悪かったのは、わたしが空気ボールかと思って蹴っ飛ばしたのがその山寺の頭だったという事だ。山寺の頭は、わたしが空気ボールかと思って蹴っ飛ばしていたので、胴体と離れてあっちの方角へと消え去ってしまっていた。

 相も変わらずに、茂みや滑り台の陰、通行人を装ってあらぬ方向を見ていたギャラリーたちは「うう……」とか「おお……」などと唸り声を上げるだけで対処の方法を知らなかった。

 わたしが機転を利かせた。

「今のは何点だ、おお!」とギャラリーたちに聞いた。

 この時点ではまだ山寺の周りにいたギャラリーたちが山寺組の人間たちである事は知らなかった。ただ、わたしが空気ボールかと思って蹴っ飛ばしたのが人間の頭である事は出てきた血の感じから分かっていて、なんとかギャグ路線でこの場を終わらせて有耶無耶にしようとはしていた。

「さあ、答えろ! 今のは何点だ!」

「八点!」と声が聞こえた。

 その声の主が誰なのかは釈然としなかったが、元々は内気な性格の持ち主たちだったから、わたしがそれらを御すのは簡単な事ではあった。

「八点か、それだけか!」とわたしは言った。

「四点!」

「二点!」

「合わせて百点だ!」などと皆が口々に騒いでいる。

 わたしはその隙を見て逃げた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

やまでらぐみ ようすけ @taiyou0209

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る