Lost Protocol

おさる

第1話 別れと出会い

 昨日、父が亡くなった。

 父は勤めていた研究所から自宅へ帰る途中で何者かに刺されたらしい。だが全く実感がない。

 明日には葬儀が行われるというのに。


 俺の名は速水 斗真。

 近畿自治区の星崎高校2年。

 近畿自治区は唯一ガイアの侵略を防いだ地域だ。


 ガイアとは15年前から世界を騒がせている未確認生物のことでその異質な見た目から地球外から来たと言われている。

 奴らに対抗できるのはプロト鉱石という緑色に輝く物質だけ。その鉱石で作られた装備は唯一奴らの生体組織を破壊できる。

 国軍は憲法によって強く制限されているため、民間へと委託するようになり、今はSpecial Operations and Response <SOAR(ソア)> という組織が主に戦っている。そのおかげで俺たちは昔と同じように平凡な日々を送れているんだ。


 そして父はガイアを滅ぼすための研究を進めていた。


 明日の葬儀が終わった後は父の研究所に向かわなければならない。研究室にある父の遺品を取りに来てほしいと連絡が来たそうだ。

 母さんはまだ忙しいみたいで代わりに俺が行くことになっていた。



 研究所につくと

「速水 景勝の荷物を取りに来ました。」

「よく来てくれたね。私は板村庄司。速水の同僚でよくお世話になってたんだ。」

「あなたが板村さんでしたか。父からいろいろ聞いています。」

「どうせ良からぬ評判なんだろう?」

「内容は控えておきます、、、。」



 軽い世間話を終え、父の研究室に着いた。


「ここが君のお父さんの部屋だ。ガイアに関する研究は機密保持のため私たちが回収して引き継がせてもらってるからね。」

「はい、父が役に立ってるならよかったです。」

「じゃあ終わったら言ってくれ。」


 ガチャ


「ここで研究をしてたのか。なんか感慨深いなぁ。」


 机を見ると俺が小学校に入学した時の写真が置いてあった。

 俺の家族は多忙で写真を撮る機会なんてなかった。もしかするとこれが最初で最後の家族写真と言っても過言じゃないほどだ。


「親父、こんな写真を持ってたんだな。ああ、もう3人での写真は撮れないのか。」


 そして俺は後悔と共に荷物をダンボールに詰めていく。

 そして立ち去ろうとした時、部屋の壁に謎の亀裂が入っていることに気がついた。


「なんだこれ。開けてみるか。」


 その壁は違和感なく作られており、中にあるものがどれほど重要かを物語っている。

 開けてみると中には大きな謎の機械があった。まるで仏壇のような形状をしており、2mを上回るほどの大きさだった。

 そして謎の機械音が響き渡る。


『アクセス権限認証中——』

『タッチパネルに手をかざしてください』


 謎の巨大装置に驚いたが、俺の手は好奇心で勝手に動いていた。


『速水 景勝の血縁者だと確認』

『起動する』


 機械に電源が入り、辺りが強く光り輝いた。

 そして俺が見たのは


「——え。これは、、、女の子か?」


 そう、機械の中には培養液に漬けられた金髪の少女がいたのだった。


『ユーザー登録を要求』

『手をかざしてください。』


 俺は言われるがままに手をかざした。


「うわっ!痛」


 装置のタッチパネルから針が現れ、手に謎の液体を注入された。


『ユーザー登録───完了』

『覚醒まで───あと18時間』


「なんなんだこれは。流石に誰にも言えないから隠したままにしておくか。」


 俺は自分の父が少女を手にかけるような犯罪者だったことは胸にしまっておくことにした。



 そして家に着くと


「おかえり斗真。お父さんの荷物はどうだった?」

「あまり良いものはなかったよ。一番の収穫はこの家族写真くらいかな。」

「懐かしいわねぇ、これ。最近見かけないと思ってたら職場に持って行ってたのね。」


 少女のことは母にも隠しておくことにした。


 食事や入浴を終え、就寝の準備に入る。今日で春休みが終わり、明日には新学期だ。

 早く寝ておくに越したことはない。



 翌朝

 俺は朝の日課でテレビをつけた。

「速報です。先ほど〇〇研究所にて謎の事故が起こりました。負傷者は出ておりませんが、施設が大きく損壊した模様です。」


「マジか、今日行かなくてよかったよ。」



 学校につくと


「また同じクラスになったな!斗真。」

「ああ、隼人となら上手くやれそうだよ。」

 こいつは成村 隼人。友達が少ない俺にとって唯一素で話せる人間と言ってもいいくらいだ。


「みんな静かに!私は担任の村雨よ。担当教科は化学で元々は研究者だったから勉強に自信があるわ。これからよろしく。」


「それで今日は課題を出したらもう帰りなさいね。でも明日からは本格的に授業が始まるから気をつけるように。」



 そして俺は帰路についた。

 俺たちが住む町は景色がイマイチだが、感傷に浸るくらいにはちょうど良い。


「キャーーーーー!」


 突然大きな叫び声が響いた。

 するとそこにはガイアがおり、二足歩行で体長は3mをゆうに超えていた。

 人々は逃げ惑い、誰かの助けを求めている。


「なんでこんなところにガイアが!」


 俺は後退りしていたが、腰が抜けてしまい、その場で呆然としていた。

 女性を食べ終えたガイアは他の人に見向きもせず、こちらへ向かってくる。


「やめろっ、、、誰かぁ、助けてくれー!」



「───初めまして、私のご主人様。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」


 横を見上げると建物の屋上に見覚えのある少女が立っていた。

 彼女は金に染まった長い髪に青を基調としたドレスを身につけていた。その子は父の研究室にいた謎の少女だ。


 そして彼女は持っていた長剣でガイアを切り刻んだ。


「私のご主人様、お怪我はありませんか。」

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