第十話:神界の空腹と、わさびの神託
魔王と王女の結婚式は、王都史上最大のイベントになった。
梅干しの香りが城壁を越え、魔族と人間の行列が混じり合う。俺は厨房の総責任者として、転送能力をフル稼働。納豆巻き寿司、カレーコロッケ、プリンアラモードの山をポンポン生み出す。フィードバックの声は、祝福の祭りさながらだ。 『結婚式の納豆、魔王の角に絡まって笑ったわ。次は神界招待状だってよ!』
『女神の食糧危機、聞いた? 神々がハーブオンリーでストライキだって。太郎兄貴、宇宙級の味変だぜ』 式の翌朝、俺は王宮のバルコニーで美香と健太と朝食中。梅干し入りおにぎりを頬張りながら、翔が息を切らして駆け込んでくる。「兄貴、大変だ! 空から光の渦が……女神の召喚だ!」 視界が白く染まる。次に目覚めたのは、真っ白な雲海。神界の玉座間だ。中央に、エルフィリア女神が玉座に座り、周りを神々が囲む。雷神、愛神、戦神……みんな、疲れた顔でハーブの葉っぱをポリポリ食ってる。 「ようこそ、佐藤太郎。あなたの能力が、神界の危機を救うわ」
女神の声は、いつもの鈴鳴きじゃなく、弱々しい。玉座の横に、空の皿の山。神界の食糧危機――永遠の命ゆえの味覚疲労だって。ハーブと果実オンリーで、数千年。神々が「もう飽きた!」とストライキ中らしい。 雷神が雷を落としそうに苛立つ。「この退屈な葉っぱ! 転生者の味を聞くぞ、醤油なるものをよこせ!」
愛神がため息。「わたくし、甘い恋の味が欲しいのに……プリン、なんてのがあるんですって?」 俺はニヤリ。徳の高さ、ここで炸裂だ。「わかりました。神界メニュー、転送しますよ。まずはアペタイザー」
能力発動。『転送:わさび寿司セット、対象:全神々。激ツーン仕様』 玉座間に、光の粒子が爆発。神々の手に、ネタの乗った握り寿司がポンッと出現。新鮮な魚介(神界の雲魚で代用)と、緑のわさびが輝く。女神が恐る恐る一口。 「……! このシャリの柔らかさ、生魚の鮮度、そしてこの緑の衝撃……鼻が! 脳が! 神の退屈が、吹き飛ぶわ!!」 神々が次々襲いかかる。雷神がわさびをガブリ。「ぐはっ! この辛さ、雷より強烈! もっとよこせ!」
戦神が醤油を垂らして頬張り、「この塩気、戦場の活力だ! 転生者よ、汝は神の救世主!」
愛神が目をハートに。「プリン転送を! 甘さと滑らかさで、恋の予感……」 転送ラッシュ。味噌汁の湯気が雲海を染め、カレーのスパイスが神風を呼ぶ。神界の玉座間は、日本食の匂いでカオス。女神が涙目で立ち上がる。「佐藤太郎、この能力……ジョークじゃなかったのね。神界の食糧供給を、君に委ねるわ。報酬は、永遠のチート強化よ」 神々が拍手。フィードバックが、神界経由で響く。
『神界寿司、ヤバい! 俺ら転生者も招待状待機中』
『女神の嫁問題? 愛神が狙ってるって噂。わさびでマッチングかよ』 だが、宴の最中、女神が耳打ち。「続きは、神界の嫁問題よ。愛神が、私のわさび中毒を狙ってるの……助けて」
俺は笑う。「わかりました。次は、恋の調味料転送ですね。梅干しより、辛いヤツで」 雲海の向こうに、神界の空が広がる。調味料の革命は、天界まで届いた。食が繋ぐ絆、無限の可能性だ。 ――だが、女神の渇望は、まだ止まらなかった。「次は、宇宙食? 星の味、試してみたいかも……」 (つづく)
異世界調味料転送 ~チート特典が醤油だった件~ 本を書く社畜 @wata098765
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界調味料転送 ~チート特典が醤油だった件~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます