書くことでしか生きられない──そんな“化生”の宿命を背負った二人の少年の物語です。
顔に傷を持つ不良・鬼塚 太助と、掴みどころのない優等生・仏崎 蓮司郎。
正反対のふたりが出会い、書くことに向き合う“それぞれの理由”が胸に残りました。
太助が自分の中の荒れた感情をどう扱えばいいか分からずに、それでも必死で言葉にしようとするところ。
蓮司郎が、限界と向き合いながら、それでも未来に手を伸ばそうとするところ。
どちらも完璧ではなく、むしろ弱くて、不器用で——
だからこそ、ひとりひとりの必死さや辛さが直接読者に刺さるのかもしれません。
胸の奥にしばらく重さ(褒め言葉です)が残るタイプの作品です。
──読み終わった直後に書いていますが、まだ胸がいっぱいです……。
鬼と仏。彼らは出会った。
鬼塚太助の右頬には、父親につけられた刃物の傷がある。
父親の背中には、『怨』の字が彫られていた。
暴力の中で、己が消されないように『捨て身』で生きていた。
仏崎蓮司郎は、余命が三年しかない。
いくら才能に恵まれていようとも、その先の未来が彼にはない。
書を開く頁。未読の部分が薄くなるように彼の人生も削られる。
彼は己が消されないように『捨て身』で生きていた。
そんな二人は出会い、合作を始める。
刻む文字は、さながら彼らの化身だろう。
手を組んだ鬼と仏。二人の合同執筆の表題は「化生」
それは彼らの約束の形であり、目指した場所の目印だった。
ラストは意外と爽やかに終わります。
見応え十分。ジャックザ・リッパーの名に相応しい切れ味で、
抉られます!!
ぜひ、ご一読を。
お勧めいたします。