路上占い、あれこれ62【占い師はやる気をなくす】

崔 梨遙(再)

文章がダブってました。2394文字です。

 夜のミナミの路上占いをしていた時のこと。



「オッチャン、なんぼで占ってくれるん?」


 ガキ共に囲まれてしまった。4人組だ。


「君達、中学生やろ? 中学生からお金なんてもらわへんわ」

「わー! オッチャン、私達のこと馬鹿にしたな。高校生やっちゅうねん!」

「そうなん? 中学生も高校生も変わらんやろ?」

「変わるわ! 大違いや」

「ほんで、なんなん?」

「安かったら占ってほしいなぁって思って」

「なんやねん? 早よ占って、早よ、帰ってくれ」

「オッチャン、無料(ただ)で見てくれるんか?」

「もう、無料でええよ。何を占いたいねん?」

「私から! 彼氏のことやねんけど」

「彼氏がどないしたんや?」

「求めてくるんやけど、やっぱりHした方がええかなぁ? 私、初めてやけど」

「君、何歳?」

「16」

「アカン」

「なんで?」

「僕は18歳やった。高校卒業して、19歳になる直前やった。僕よりも早く初体験をすませるなんて、許されへん」

「オッサン、それ、占いとちゃうやんか。ちゃんと占ってや」

「・・・ほら、『節度を守れ』って出たやんか」

「マジ? マジで占った?」

「初体験の前に、相手の男をよく見た方がええで。もしかすると、それが目的なのかもしれへん。相手が本当に自分に惚れてると思えた時や、初体験は」

「うーん・・・」

「はい、次、私!」

「はいはい、なんやねん?」

「私、中学から何人かと付き合ってきたんやけど、みんなから軽い女やと思われてるみたいやねん。どうしたらええかな?」

「いや、実際、軽い女なんやろ?」

「軽いって言うな! 占って」

「・・・大凶や」

「あ・・・わかったで。『こういう時はおとなしくしろ』って言うんやろ?」

「ちゃうわ! 今回は逆や! 『自分の真価を問われてる時』だと思って戦え! 誰にどう見られても、自分が『これでいい』と思ったことを貫いてみせろ!」

「うわ! そうなん?」

「そうや。戦え。はい、次」

「次、私やけど、オッサン、なんかだるそうに見えるわ」

「だるいわ、なんでガキ4人に囲まれなアカンねん」

「普通、女子高生4人に囲まれたら喜ぶで」

「僕は年上が好きやねん!」

「まあ、ええわ。私、彼氏と仲がええんやけど、このまま続くかな?」

「・・・なんや、やることはやってるんやな」

「えへへ・・・」

「月単位で占ったけど半年は今のままや、その先はまだ見えへん。ただし、妊娠のキーワードが出てるから避妊はしろよ」

「はーい!」

「最後は誰や?」

「私・・・」

「なんやねん? 早く言えや」

「告白されたんやけど」

「それで?」

「付き合った方がええかな?」

「そんなん、自分で決められへんの?」

「今、特に好きな男子もいないから断る理由が無いねん」

「・・・占うわ。・・・やめとき。君が傷つくわ」

「うん、わかった」

「あっさりやな!」

「オッサン、もう1つ占ってくれるかな?」

「えー! もう遅い時間やで、早よ帰れや」

「オッサン、やる気無いやろ?」

「やる気が無いってさっきも言ったやろ」

「まあ、そう言わんと、もう1つ・・・」



 疲れた。やる気も無くなった。今日は帰ろうかな?


「すみません、占ってもらえますか?」


 おっと、今度は美人&スタイルがいいOL風だ。


「はい、何を占いましょうか?」

「今、財布〇〇〇〇(ブランド名)か? △△△△か? 迷ってるんです。どっちがいいですか?」

「・・・はい。〇〇〇〇を買った場合と△△△△を買った場合をそれぞれ見て、比べました。〇〇〇〇の方がいいです」

「えー! でも、〇〇〇〇の方が高いんですよ」

「その分、ながもちしますよ」

「わかりました、もう1ついいですか?」

「いいですよ」

「財布と同じようなものなんですけど、今、A君とB君、2人から告られて迷ってるんです」

 

 おいおい、男選びが財布と同じようなものなのかよ。


「A君はイケメンだけど貧乏なんです。この前、うなぎを食べに行ったら、『金が足りない』って言い始めて、結局、私が払ったんです」

「はいはい、それで?」

「B君はイケてないけどお金持ちなんです。ほら、この指輪もネックレスもB君が買ってくれたんですよ」

「もう、占っていいですか? Aさんと付き合ったらどうか? Bさんと付き合ったらどうか? それぞれ占って比較しましょう」

「あ、じゃあ、それで・・・」

「・・・Bさんの方がいいですね」

「そうなんですか? 具体的にはどんな感じなんですか?」

「Aさんと付き合った大凶で、Bさんと付き合ったら凶でした。Bさんの方がマシです。凶や大凶に細かい補足は必要ですか?」

「どういうことですか? なんで凶と大凶なんですか?」

「そんなことを言われましても・・・やはり愛が無いからじゃないですか?」

「愛情だけでは食べて行けませんよ」

「じゃあ、新たな出逢いに期待したらどうですか?」

「わかりました・・・」

「あ、ご期待に添えない占いの結果でしたので、料金は要りませんよ」


 ふー! 帰ってくれた。ああいう客は時々くるが、ああいう客の相手をしていると、なんだか疲れる。愛情のある恋愛の占いなら大好きなのだが、愛のない恋愛の占いは何故か疲れる。やる気が無くなっていく・・・。



 もう帰ろうかな。


「すみません、いいですか?」


 おとなしそう、人の良さそうな女性だ。癒やし系かもしれない。


「なんでしょう?」

「勝負下着を買うんですけど、何色がいいですか?」

「・・・・・・」

「もしかして、やる気を無くしましたか?」

「いえいえ、とことん占いますよ。まずは寒色、暖色、モノトーンから絞り込みましょうか?」


「・・・これでいいですね。赤、オレンジ、黄色、ピンク、暖色!」

「ありがとうございますー! これから買いに行きます-!」

「これから? 店、開いてますか?」

「ドン〇〇〇ーテに行くんです。安いから」

「いってらっしゃい」

「良かったら買いものに付き合ってくれませんか? 男性の意見も聞きたいんです。お願いします、行きましょう!」

「ちょっと、腕を引っ張らないでください・・・」



 こうして、占い師はやる気を無くす。




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路上占い、あれこれ62【占い師はやる気をなくす】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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