第12話 東京魔女サミット

 十二月三十一日、午後二時。

 東京・渋谷。

 スクランブル交差点の近くにある、小さなイベントスペース「渋谷コミュニティホール」。

 その入り口には、大きな看板が掲げられていた。


『第1回 東京魔女サミット

〜世界の魔女たちが語る、魔法の自由と未来〜

主催:呪文屋エリーザ&魔女研究会』


 エリーザは、会場の入り口で深呼吸をしていた。

 白いブラウスに黒いロングスカート、そして三日月のペンダント。今日は特別に、赤いショールも羽織っている。

「緊張スル......」

 小さく呟く。

 蓮が、横から励ました。

「大丈夫ですよ、エリーザさん。あなたなら、絶対にうまくいきます」

「デモ、コンナにタクサンの人......」

 エリーザは、会場の中を覗いた。

 すでに百人以上の観客が集まっていた。

 魔女に興味がある人、メディア関係者、大学の研究者——様々な人々が、この日を待っていた。

「みんな、エリーザさんの話を聞きたがってるんです」

 リナが、横から声をかけた。

「先生、自信持ってください」

「......ウン」

 エリーザは、ペンダントを握りしめた。

「曾祖母、見守ってて」


 午後三時、サミットが開始された。

 司会は、田中教授が務めた。

「皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。『第1回東京魔女サミット』を開催いたします」

 拍手が起こった。

「本日のゲストスピーカーは、ルーマニアからエリーザ・ポペスクさん、フランスからシャルロット・デュボワさん、そして日本から桜井リナさんです」

 三人が、ステージに上がった。

 観客から、大きな拍手が起こった。


 最初に、エリーザが話し始めた。

「ミナサン、コンニチハ。ワタシ、エリーザ・ポペスク。ルーマニアから来た魔女デス」

 エリーザは、少し緊張しながらも、笑顔で話し続けた。

「ワタシ、今年一月、日本、来マシタ。理由、ルーマニア政府、『魔女税』、作ッタ。魔女、税金、払ワナイト、働ケナイ」

 観客から、どよめきが起こった。

「ワタシ、悲シカッタ。怒リマシタ。ダカラ、日本、来マシタ。日本、魔女税、ナイ。自由に魔法、デキル」

 エリーザは、続けた。

「デモ、日本、来テ、ワカッタ。『自由』、簡単ジャナイ。日本デモ、魔女、登録制度、作ロウト、シマシタ」

 エリーザは、観客を見渡した。

「デモ、ワタシタチ、戦イマシタ。署名、集メマシタ。ミンナデ、声、上ゲマシタ。ソシテ、勝チマシタ」

 観客から、拍手が起こった。

「コレ、教エテクレマシタ。魔法、一人デハ守レナイ。ミンナデ、守ル」

 エリーザは、力強く言った。

「魔法、世界中ノモノ。魔女、世界中ニイル。ダカラ、ミンナデ、協力スル。ソレガ、魔法、守ル道」

 大きな拍手が、会場を包んだ。


 次に、シャルロットが話した。

「皆さん、こんにちは。シャルロット・デュボワです」

 シャルロットは、流暢な日本語で話し始めた。

「私は、フランスで都市型魔術を使っています。恋愛、金運、成功——現代人が求める魔法を提供しています」

 シャルロットは、エリーザを見た。

「最初、私はエリーザと対立しました。『農村型魔術は古い』と思っていました」

 シャルロットは、少し恥ずかしそうに笑った。

「でも、エリーザと話して、気づきました。魔法に『古い』も『新しい』もない。どちらも、人を助けるための技術です」

 シャルロットは続けた。

「西欧の魔女も、東欧の魔女も、アフリカの魔女も——みんな同じです。魔法を愛し、人を助けたいと思っている」

 シャルロットは、拳を握りしめた。

「だから、私たちは団結しなければなりません。世界中の魔女が、お互いを尊重し、協力する。それが、『世界魔女サミット』の目的です」

 再び、大きな拍手が起こった。


 最後に、リナが話した。

「皆さん、初めまして。桜井リナです」

 リナは、少し緊張しながらも、笑顔で話し始めた。

「私は、もともと魔女ではありませんでした。ただの大学生で、インフルエンサーになりたいと思っていました」

 リナは、エリーザを見た。

「でも、エリーザ先生に出会って、魔法の素晴らしさを知りました」

 リナは続けた。

「最初、私はエリーザ先生の真似をして、偽物の魔女をやっていました。でも、先生は怒らなかった。むしろ、弟子にしてくれました」

 リナの目に、涙が浮かんだ。

「先生は、『魔法は努力するもの』と教えてくれました。すぐに結果が出なくても、毎日コツコツと続ける。それが、魔女の道だと」

 リナは、観客を見渡した。

「今、私はまだ魔女見習いです。でも、いつか本物の魔女になります。そして、エリーザ先生のように、たくさんの人を助けたいです」

 観客から、温かい拍手が起こった。


 三人の発表が終わった後、質疑応答の時間になった。

 一人の女性が手を挙げた。

「エリーザさんに質問です。魔法は、本当に効くんですか?」

 エリーザは、少し考えてから答えた。

「効キマス。デモ、『効ク』ノ意味、人ニヨッテ違ウ」

「どういうことですか?」

「魔法、結果、変エル。デモ、一番大事ナノ、心、変エルコト」

 エリーザは続けた。

「例エバ、恋愛ノ魔法。バジル、育テル。三週間、毎日、水、ヤル。ソノ間、自分ノ気持チ、整理スル。勇気、育テル」

「なるほど......」

「魔法、『すぐ叶エル』モノジャナイ。プロセス、大事。時間カケテ、自分、変ワル。ソレガ、魔法」

 女性は、深く頷いた。

「ありがとうございます。よくわかりました」


 次に、一人の男性が手を挙げた。

「シャルロットさんに質問です。西欧の魔術と東欧の魔術、どちらが優れているんですか?」

 シャルロットは、笑顔で答えた。

「どちらも優れています。ただ、目的が違うだけです」

「目的......?」

「はい。西欧の魔術は、『個人の成功』を目指します。東欧の魔術は、『共同体の幸福』を目指します」

 シャルロットは続けた。

「どちらも正しい。どちらも必要。世界は、多様性によって豊かになります」

 男性は、納得した顔で頷いた。


 質疑応答が終わった後、田中教授が締めの言葉を述べた。

「本日は、貴重なお話をありがとうございました」

 教授は、観客を見渡した。

「魔法は、科学では説明できないかもしれません。でも、確かに人を幸せにする力があります」

「私たちは、魔法を否定するのではなく、理解しようとすべきです。そして、魔女たちの文化を尊重すべきです」

 教授は、エリーザたちを見た。

「彼女たちは、何百年も続く伝統を守っています。それは、人類の貴重な財産です」

 大きな拍手が、会場を包んだ。


 サミットが終わった後、会場の外で記者たちが待っていた。

「エリーザさん、インタビューいいですか?」

「ハイ、ドウゾ」

 エリーザは、カメラの前に立った。

「今日のサミット、どうでしたか?」

「トテモ、良カッタ。タクサンノ人、魔法、興味持ッテクレタ」

「今後の活動予定は?」

「来年三月、パリデ世界魔女サミット、開催。ワタシ、参加スル」

 エリーザは、力強く言った。

「世界中ノ魔女、集マル。知識、共有スル。ソシテ、魔法ノ自由、守ル」


 その夜、渋谷のカフェで、エリーザ、シャルロット、蓮、リナが集まった。

「今日は、お疲れ様でした」

 蓮が、コーヒーを配った。

「疲レタ......デモ、楽シカッタ」

 エリーザは、満足そうに笑った。

「エリーザ、あなた、すごかったわよ」

 シャルロットが言った。

「日本語、まだ完璧じゃないのに、あれだけ話せるなんて」

「シャルロット、手伝ッテクレタ。アリガトウ」

「どういたしまして」

 その時、エリーザのスマートフォンが鳴った。

 マリアからのメッセージだった。


『エリーザ、サミットの動画、見たわ。すごかった。あなたは、本当に立派な魔女になったわね。ルーマニアでも、あなたのニュースが話題になってる。政府も、魔女税の見直しを検討し始めたらしいわ。あなたの戦い方は、正しかった』


 エリーザは、メッセージを読んで涙を流した。

「マリア......」

「どうしたんですか?」

 蓮が尋ねた。

「マリア、言ッテクレタ。ルーマニア政府、魔女税、見直シ始メタッテ」

「本当ですか!?」

「ウン」

 エリーザは、涙を拭った。

「ワタシノ戦イ、意味、アッタ」

 蓮は、エリーザの肩を叩いた。

「もちろんです。エリーザさんの戦いは、世界中の魔女に希望を与えました」


 その後、四人は渋谷の街を歩いた。

 大晦日の渋谷は、人で溢れていた。

 カウントダウンまで、あと数時間。

「エリーザ、今年はどうだった?」

 シャルロットが尋ねた。

「......色々、アッタ」

 エリーザは、空を見上げた。

「日本、来タ。魔女、始メタ。友達、デキタ。戦ッタ。勝ッタ」

 エリーザは、蓮を見た。

「一番大事ナノ、レンニ会エタコト」

「エリーザさん......」

「レン、ワタシノ一番ノ理解者。一番ノパートナー」

 エリーザは、蓮の手を握った。

「来年モ、一緒ニ、ヨロシク」

 蓮は、笑顔で頷いた。

「ああ。まだまだ呪文屋は繁盛するさ」


 午後十一時五十分。

 渋谷のスクランブル交差点。

 エリーザ、蓮、リナ、そしてシャルロットは、カウントダウンを待っていた。

 周囲には、数千人の人々が集まっている。

 みんな、新しい年を迎える準備をしていた。

「あと十秒!」

 誰かが叫んだ。

「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1——ハッピーニューイヤー!」

 歓声が上がった。

 花火が、夜空に打ち上がった。

 エリーザは、その光景を見て涙を流した。

「新シイ年......」

 小さく呟く。

「曾祖母、見テル? ワタシ、頑張ッテル」

 風が、優しく吹いた。


 その後、四人は明治神宮へ初詣に向かった。

 長い行列に並びながら、エリーザは蓮に言った。

「レン、今年、何、願ウ?」

「そうですね......」

 蓮は、少し考えてから答えた。

「エリーザさんの魔法が、世界中に広がりますように」

「レン......」

「あなたの魔法は、本物です。だから、もっと多くの人に知ってもらいたい」

 エリーザは、笑顔で頷いた。

「アリガトウ。ワタシモ、同ジコト、願ウ」


 初詣を終えた後、四人はコスモス荘に戻った。

 シャルロットは、翌日フランスに帰る予定だった。

「エリーザ、また三月にパリで会いましょう」

「ウン! 絶対、行ク!」

 二人は、抱き合った。

「リナも、来るでしょ?」

「はい! 私も行きます!」

 リナも、シャルロットと抱き合った。

「じゃあね、みんな。また会いましょう」

 シャルロットは、タクシーに乗って去っていった。


 コスモス荘の三階、エリーザの部屋。

 エリーザは、窓の外を見つめていた。

 新しい年の最初の朝日が、東京の街を照らしている。

「曾祖母、新シイ年、始マッタ」

 小さく呟く。

「今年モ、頑張ル。アナタノ魔法、世界ニ広メル」

 エリーザは、ペンダントを握りしめた。

「来年、パリデ世界魔女サミット。ソコデ、世界中ノ魔女、会ウ」

 エリーザは、決意を新たにした。

「ワタシノ戦イ、マダマダ続ク」


 その日の午後、「呪文屋」を開こうとすると、一人の女性が訪ねてきた。

「あの......エリーザさんですか?」

 女性は、三十代くらい。黒いコートを着て、大きなスーツケースを持っていた。

「ハイ、ワタシ、エリーザ」

「初めまして。私、山田美鈴と申します」

 女性は、深々と頭を下げた。

「実は......私も魔女なんです」

「エッ!?」

 エリーザは驚いた。

「日本人ノ魔女!?」

「はい。祖母から、日本の伝統魔術を学びました。『陰陽道』と呼ばれるものです」

 美鈴は、小さな袋を取り出した。

「私も、エリーザさんのように、人を助けたいんです。教えていただけませんか?」

 エリーザは、目を輝かせた。

「モチロン! ヨウコソ、呪文屋ヘ!」


 こうして、新しい年が始まった。

 エリーザの「呪文屋」には、新しい仲間が増えた。

 そして——

 物語は、まだまだ続く。


エピローグ 新しい魔女

 一月十五日、午前十時。

 コスモス荘の玄関に、一人の若い女性が立っていた。

 栗色の髪、緑色の瞳、黒いロングコート——

 その姿は、エリーザによく似ていた。

 女性は、呼び鈴を押した。

 数秒後、エリーザが出てきた。

「ハイ、ドナタ——」

 エリーザは、女性を見て固まった。

「......マリア!?」

「エリーザ!」

 二人は、抱き合った。

「ナンデ、ココニ!?」

「ビザが下りたの! だから、日本に来たわ!」

 マリアは、嬉しそうに笑った。

「私も、日本で魔女やる!」

「ホント!?」

「本当よ。あなた一人に、楽しいことさせておけないもの」

 マリアは、スーツケースを持ち上げた。

「それに、ルーマニアの状況、少しずつ良くなってる。魔女税の見直しも始まった。だから、私も少し自由に動けるようになったの」

 エリーザは、涙を流した。

「マリア......ヨウコソ、日本ヘ!」


 その日の午後、マリアは「呪文屋」を見学した。

「すごいわね、エリーザ。こんな素敵な場所を作ったのね」

「ウン。デモ、一人ジャナイ。レン、リナ、ミンナガ手伝ッテクレタ」

 エリーザは、蓮とリナを紹介した。

「コレガ、レン。ワタシノパートナー。コレガ、リナ。ワタシノ弟子」

「初めまして、マリアです」

 マリアは、流暢な日本語で挨拶した。

「え!? 日本語、話せるんですか!?」

 蓮が驚いた。

「ええ。大学で勉強しました。エリーザが日本に行くって決めてから、私も勉強を始めたの」

「スゴイ......」

 リナも感心した。

「マリアさん、どんな魔法が使えるんですか?」

「私の専門は、『薬草魔術』よ」

 マリアは、小さな袋を取り出した。

「ハーブを調合して、薬を作る。病気を治す魔法が得意」

「ソレ、日本デモ需要アル!」

 エリーザは目を輝かせた。

「マリア、一緒ニ、呪文屋、ヤロウ!」

「もちろん! そのつもりよ」


 その夜、コスモス荘でささやかな歓迎会が開かれた。

 エリーザ、マリア、蓮、リナ、そして美鈴も参加した。

「では、マリアさんの来日を祝って、乾杯!」

 蓮が音頭を取った。

「乾杯!」

 みんなでグラスを合わせた。

 マリアは、日本の料理を食べて感動していた。

「美味しい! これが日本の味ね」

「マリア、日本料理、初メテ?」

「うん。ルーマニアでは、日本料理のレストランなんてなかったから」

 マリアは、笑顔で続けた。

「これから、日本のこと、たくさん学びたいわ」


 歓迎会の後、エリーザとマリアは屋上に上がった。

 二人は、東京の夜景を見つめていた。

「エリーザ、あなた、本当にすごいわ」

 マリアが言った。

「日本で、こんなに成功するなんて」

「成功......シテナイ。マダマダ」

「でも、たくさんの人を助けてる。世界中の魔女に希望を与えてる」

 マリアは、エリーザを見た。

「あなたは、私たちの誇りよ」

 エリーザは、涙を流した。

「マリア......」

「泣かないで。これからは、二人で頑張りましょう」

 マリアは、エリーザの手を握った。

「ルーマニアの魔女が、二人も日本にいる。きっと、もっとすごいことができるわ」

「ウン!」

 エリーザは、力強く頷いた。


 翌日、井の頭公園の「呪文屋」に、新しい看板が追加された。


『呪文屋エリーザ&マリア

ルーマニアの伝統魔術で、あなたの悩みを解決します

新メニュー:薬草魔術による健康相談』


 看板の前で、エリーザとマリアは笑顔で並んでいた。

 蓮が、その様子を写真に収めた。

「いい写真です。これ、SNSにアップしましょう」

「イイネ!」

 エリーザとマリアは、カメラに向かってポーズを取った。


 その日の午後、最初の依頼者が訪れた。

「あの......体調が悪くて......」

 若い女性が、疲れた顔で座った。

「ダイジョウブ。ワタシタチ、助ケル」

 エリーザが言った。

 マリアが、女性の話を聞き始めた。

「どんな症状ですか?」

「最近、よく眠れなくて......疲れが取れないんです」

「なるほど......」

 マリアは、小さな袋からハーブを取り出した。

「これは、『安眠のハーブティー』です。カモミール、ラベンダー、レモンバームを調合しました」

 マリアは、女性にハーブティーの袋を渡した。

「毎晩、寝る前に飲んでください。一週間で、効果が出るはずです」

「ありがとうございます......」

 女性は、深々と頭を下げた。


 女性が帰った後、エリーザはマリアに言った。

「マリア、スゴイ。薬草魔術、ワタシヨリ上手」

「そんなことないわ。あなたも、たくさんの魔法を知ってる」

 マリアは笑った。

「私たち、お互いに補い合えるわね」

「ソウダネ」

 エリーザは、空を見上げた。

「二人デ、モット強クナレル」


 その夜、蓮は「魔法検証ノート」を更新した。


【魔法検証ノート 第12回】

テーマ:新しい仲間——マリアの到着

【出来事】

エリーザの親友、マリア・ドラグが日本に到着。

彼女は薬草魔術の専門家で、「呪文屋」の新メンバーとなった。

【薬草魔術とは】

ハーブを調合して、病気や不調を治す魔術。

西洋医学のハーブ療法と似ているが、魔女の呪文と組み合わせることで、

より強力な効果が期待できるとされる。

【これからの展開】

エリーザとマリアが協力することで、「呪文屋」はさらに発展するだろう。

そして、三月のパリでの世界魔女サミットに向けて、準備が進む。

【所感】

この一年で、エリーザは本当に成長した。

一人で日本に来た若い魔女が、今では仲間を持ち、世界に影響を与えている。

俺も、エリーザと一緒に成長できていると感じる。

来年も、この物語は続く。

そして、俺はその記録者として、ずっと寄り添い続ける。


 蓮は、ノートを閉じた。

 そして、窓の外を見た。

 冬の夜空に、星が輝いている。

「エリーザさん......これからも、よろしくお願いします」

 小さく呟いた。


 一方、エリーザは自分の部屋で、曾祖母の写真に向かって話しかけていた。

「曾祖母、マリア、来タ」

 小さく呟く。

「二人デ、日本デ、魔女、ヤル」

 エリーザは、ペンダントを握りしめた。

「来年、パリデ世界魔女サミット。ソコデ、世界中ノ魔女、会ウ」

 エリーザは、決意を新たにした。

「ワタシノ夢、世界中ノ魔女、自由ニナル。ソノタメニ、頑張ル」

 風が、窓の隙間から吹き込んできた。

 まるで、曾祖母が「応援してる」と言っているかのように。


 翌朝、井の頭公園。

 エリーザとマリアは、並んで看板の前に座っていた。

「マリア、準備、イイ?」

「ええ、準備万端よ」

 二人は、笑顔で見つめ合った。

「ジャ、開店!」

 エリーザが声を上げた。


『呪文屋エリーザ&マリア

本日も営業中』


 こうして、新しい章が始まった。

 二人のルーマニア魔女が、日本で——

 いや、世界で——

 魔法の自由を守るために戦う物語。

 その物語は、まだまだ続く。


【第十二話&エピローグ 完】


【第1シーズン 完結】


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ルーマニア魔女の呪文屋さん ~井の頭公園で始まる、異国の魔法と絆の物語~ ソコニ @mi33x

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