17話~それでも悪い事は許しません!~

とある夜。エナはいつものように闇市へ向かっていた。


――市場調査だから! サコクの屋台が近いからご飯食べるだけだから!


そう、自分はまだ真面目な聖騎士だと心の中で言い訳しながら……。


「ひっく……ひっく……」


耳に飛び込んできた子どもの泣き声に、エナの足が止まる。

視線を向けると、小さな狼の耳を持つ亜人の少年が檻に閉じ込められていた。

店の看板には、大きく「奴隷売買」と書かれている。


エナは思わず店に立ち寄り、泣いている少年に手を伸ばす。

まだ10歳にも満たないだろうか――。


(可哀想に……)


頭を撫でると、少年は怯えたように見上げ……次の瞬間、グルルルと喉を鳴らし警戒心をむき出しにする。


ガシャン!


檻を蹴り飛ばす音。奴隷商人が乱暴に近づいてきた。


「ちょっと! やめなさい!」

エナは声を荒げる。


「お客さん、すみませんねぇ。こいつ、まだ自分の立場を理解してねぇみたいで」


「立場? 子どもなんだから当たり前でしょ! なんでこんな子を――」


その言葉を遮るように、海賊Aがエナの口を押さえて檻から引き離した。


「すみやせんw こいつ、箱入りだったもんで」

海賊Aは奴隷商人に謝り、その場を離れようとする。


「放してください! どうして止めるんですか!? あんなの非人道的でしょ!」


「お嬢に言われたの、忘れたんですかぃ? ここじゃ無関心が1番正義なんですよ!

奴隷商には奴隷商の生活ってもんもありやす!!」


「生活って……じゃあ、あの男の子の人生は!?」


「奴隷ってのは、そういうもんで――」


バァンッ!


銃声が響き、2人は振り返る。

スティアナが奴隷商を撃ち抜いていた。


撃たれた商人は傷口を押さえてうずくまる。


「お嬢!? 何してんですか!」

海賊Aが慌てて駆け寄る。


「海賊A! 檻の鍵を探せ! こんな子どもを閉じ込めるなど許せぬ! 恥を知れ!」


その声と同時に、闇市の傭兵たちが一斉にスティアナたちを取り囲む。


「お……お嬢、こいつはまずいですぜ……」


「おい! 運営の責任者はおらぬか!」

スティアナは一切動じずに声を張り上げた。


だが傭兵たちは答える代わりに、じりじりと間合いを詰めてくる。


「ふぅ……。海賊A、わらわに付き合え」


「へい!」


号令と同時に、海賊Aがシミターを振りかざし、真っ先に敵へ飛び込んだ。

大振りで荒々しい突撃――だが、それこそが狙いだった。


「うおおおおおっ!!」


勢いに押され、傭兵たちの視線と意識が一斉に海賊Aへ向く。


――その瞬間。


パァン!


横合いからスティアナの銃声が響き、気を取られた傭兵の眉間に弾丸が正確に突き刺さった。


「がっ……!」


スティアナは海賊Aの動きを計算に入れ、次々と狙撃を重ねる。

海賊Aは自ら危険を背負い込み、あえて隙だらけに突撃し続けることで敵を“的”に変えていった。


「こっち見やがれ! 俺が相手だぁ!!」


囮となった海賊Aに群がる傭兵。

それをテンポよく撃ち抜いていくスティアナ。


キィン!


スティアナの背後から振り下ろされた刃を、エナの剣が受け止めた。


「ちょっと! 何してるんですか!? ここで騒ぎを起こすなって言ったのは、そっちでしょ!」


「お主と一緒じゃ。奴隷のことはどうでもいいが……子どもを檻に入れるのは許せん!」


スティアナの言葉に、エナの胸のつかえが落ちる。


「……やっていいんですね?」


「許可する!」


戦いが始まった。

海賊Aの突撃が威圧となり、スティアナの銃撃が正確に傭兵を削る。

スティアナに迫る敵は、エナの剣が裁いた。


数的不利にもかかわらず、30分足らずで制圧は完了した。


「お嬢! カギ見つけやした!」

どこからともなく海賊Bが現れ、檻の鍵を掲げる。


「よし、ずらかるぞ!」


狼の少年を抱きかかえ、スティアナの号令と共に一行は闇市を後にした。




―――――――――――――――――――

読んで頂き、ありがとうございます!

今回は初めての試みとして、“ギャグ特化”の作品に挑戦してみました。

これまでのように「書きたいものを書く」ではなく、

「読んでくださる皆さんに楽しんでもらいたい」という想いで仕上げています。

もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と感じて頂けましたら、

ぜひ応援・コメント・レビューで教えてください!

それが次の執筆の大きな力になります✨


※もし反応があまり良くなければ、今後の方向性の判断材料にもさせて頂くつもりです💦

そのため、ちょっとだけ厳しめの評価も感謝しながら受け止めます!

(ちょっとだからね! めちゃくちゃ言われると泣くからね!)


この作品は全27話構成で、毎週火・木・土に更新予定です。

(時間は固定ではありません)

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女聖騎士、赴任先がよりによって海賊国家でした なぎゃなぎ @nagyanagi

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