シトラスオレンジの香り

ももいくれあ

第1話

妻はお風呂に入れない。

そういう病を抱えている。

何日かに一度、カラダを丁寧に全身拭くのが僕の時間だ。

そのまた少し遠い何日かに一度、ヘルパーさんが来てくれることもあり、

妻は入浴することができ、髪をキレイに洗って、サッパリしていく。

普段殆ど書斎から出ない僕は、妻が毎日何をして過ごしているのか、

ただ、なんとなくしか知らなかった。

決して興味がないのではなく、深く詮索したくなかったのだ。

そんなある日、妻が珍しく僕の書斎に本を探していると言って入って来た。

その時、

シトラスとオレンジの混ざり合ったような淡い香りが僕の胸を躍らせた。

妻の髪はツヤがあり、キレイに整えてられていた。

窓からの風のせいで、髪はハラリと顔にかかりいっそう豊かな表情だ。

思わず僕は、後ろからぎゅーと抱きしめてしまった。

拒食症という病も抱え抱きしめれば折れてしまいそうになってしまった妻。

でも僕は構わなかった。

他にも沢山の病を抱えても、なお毎日を一歩ずつ歩こうとする妻。

何より、こんなにいい香りのする妻。が大好きだった。

ありがとう。

今日も一緒にいてくれて、そしてこれからも一緒に歩いて行こうね。

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シトラスオレンジの香り ももいくれあ @Kureamomoi

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