第3話 太陽

僕のママとパパは正反対な気がする。

だって、ママはどちらかと言うと静かな方で、穏やかなタイプだ。それに対してパパはうるさいくらいに明るく、どんな時でも前向きな人だ。なのに、ママとパパはとてもお似合いなのだ。お互いがお互いを思いやり、ママもパパも朗らかな表情を浮かべるのだ。

僕はそんなふたりが好きだ。もうずいぶん長いことずっと一緒にいるのに、まだ初恋のような初々しさが残っているところとか。でも、どうやら2人は元々はただの顔見知りだったみたい。それも電車だけの。

ある日、僕はつい気になって「どうしてママはパパを好きになったの?」と聞いてみた。すると、ママは目を大きくして、少し頬を火照らしながら「パパが海に連れて行ってくれたから。」と答えてくれた。僕はなんで海だけで好きになったのかは分からなかったけど、答えたママを見ているパパはとても嬉しそうだった。だからきっと、これはふたりだけが分かる暗号なのだと思った。

そして今日もまた僕は電車に乗る。

まだ出会わぬあの子を待つように。


僕は太陽が好きだ。

赤く、輝かしい太陽が。

ママは海が好きだ。

太陽に照らされ、キラキラ光る海が。

パパは電車が好きだ。

車窓から見える海と太陽をママと眺めるこの電車が。

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電車は海を追いかける 久藤涼花 @ryk_kdu

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